◆エドワード・ルトワック『中国4.0:暴発する中華帝国』を読み解く

◆エドワード・ルトワック『中国4.0:暴発する中華帝国』を読み解く
(奥山真司氏、翻訳)

※要旨

・ベトナムの反発。
まず、中国は、ベトナム沖にオフショアの
石油掘削用のプラットホームを送り込み、
2014年8月まで居座るつもりだった。

・ここで明確になったのは、
中国がベトナムについて全く無知だったということだ。
ベトナムと中国は2000年間も隣国であったことを
考えれば、これは驚くべきことである。

・北京側は、ベトナム政府が理性的な考えにしたがって、
中国の押し付けるルールを飲み込むはずだと考えていた。

石油プラットフォームを備え付ければ、
中国はさらに強力な艦隊を送り込むので、
ベトナムは「もう抵抗できない」と
冷静に計算して手を引くだろう、と。

・ところがベトナム側は、
「たしかにこちらが海の方面で劣勢なのは認める。

これは昔から変わらない事実だから、
われわれもよくわかっている。
よって、われわれは別の方面で戦うしかない」
という形で反応したのである。

・つまりベトナムは、降伏しなかったのだ。
彼らには護るべき「国体」があり、
それは「決して降伏しない」というものだ。

・感情に圧倒される冷静な頭脳。
人類の歴史は、長きにわたる犯罪と愚行の歴史である。

それに疲れ、犯罪と愚行を行うエネルギーを喪失した
ほんのわずかな期間にだけ平和が訪れる。

・たとえば、日本の真珠湾攻撃決定の瞬間は、
人類の頭脳の冷静な働きが
もっとも必要とされた瞬間の一つであろう。

ところが、当時の東京は、
軍が感じていたフラストレーションにすべてが支配され、
冷静な判断のための大きなチャンスを逃してしまった。

・2003年のアメリカでも、
冷静な頭脳は感情に圧倒されてしまった。

9・11事件に対する復讐の感情が
社会全体を支配していたのである。

・2009年の中国も同じである。
どんな大国であっても、リーダーも、国民も、
こうした激しい感情に支配され、
取り返しのつかない過ちを犯しうるのである。

・情報のフィードバック・システムはない。
インテリジェンスは、国家にとって極めて重要である。

すでにスターリングラードで敗戦が確定していたにも
かかわらず、ナチスが1945年5月まで政権の座にいられたのは、
ヒトラーがナチスの親衛隊(SS)の
情報部(SD,後の国家保安本部)という、
インテリジェンスのシステムを確実に掌握していたからだ。

・国家保安本部のトップ、ラインハルト・ハイドリヒに
上がられてくる報告書は、100%事実に即したものであった。

たとえばヒトラーの演説の聴衆の受けがよくなければ、
その事実をそのまま書いていたのだ。

・つまりヒトラーが最後まで政権を握ることができたのは、
正しい情報のフィードバック・システムがあったからだ。

ところがソ連にはそのフィードバック・システムがなかった。
現在の中国の情報フィードバック・システムも機能していない。

・ミャンマーは、中国にとって決定的に重要な同盟国である。
ここに道路を建設して雲南省を通過する物流ルートを完成させ、
マラッカ海峡をバイパスすることは、
中国にとって死活問題となる巨大なプロジェクトだ。

それにもかかわらず、
ミャンマーの世情に関する重要情報や、
ミャンマー国民の不満の情報を、
誰も上層部に伝えなかったのである。

・アフリカのマリへの進駐をフランス軍に命じた
オランド大統領に言及したが、
彼はその命令を電話一本で伝えたのだ

日本がもし尖閣を守りたいのなら、
日本のリーダーにもこのくらいの意識が必要になってくる。

・より具体的に言えば、
(A)「領土を守る」という国民的コンセンサスと、
(B)それを実現するためのメカニズム、

つまり電話をとって自衛隊に尖閣奪還を指示できる
仕組みの両方が必要になる。

・これは国会の承認を必要としないものでよい。
なぜなら自国の領土を守るには、
スピードと自律的な動き、
それに信頼性が不可欠だからだ。

・ここで肝に銘じておくべきなのは、
「ああ、危機が発生してしまった。

まずアメリカや国連に相談しよう」
などと言っていたら、島はもう戻ってこないということだ。

ウクライナがそのようにして、
クリミア半島を失ったことは記憶に新しい。

★以下、訳者・奥山氏の解説。

・ルトワックは「戦略の逆説的論理」をどこで思いついたのであろうか。
ギリシャのヘラクレイトスやプロイセンのクラウゼヴィッツなどから
ヒントを得ているようなのだ。

よく話を聞いてみると、どうやら軍人としての自分自身の経験に
よるところが多いようだ。

ただし『孫子』の影響があることも
ここで特筆しておくべきかもしれない。

・ロシアが2014年にクリミア半島を併合したことは
われわれの記憶にも新しい。

ルトワックによれば、その直前にプーチン大統領は、
ロシア内の国際政治関係の識者を集め、
クリミア半島をロシアが占領した場合に
諸外国がどう反応するのかを徹底して聞いたという。

ドイツも、イギリスも、そしてアメリカも、
それほど強くロシアに抗議できないと判断した上で
プーチン大統領は軍にゴーサインを出して、
われわれの知るように「ハイブリッド戦争」
(非正規軍、特殊部隊、宣伝工作、情報操作など
さまざまな手段を組み合わせた作戦形態)という形で
クリミアを「奪還」したのである。

・つまりロシアは、
中国と違って戦略が上手い、ということだ。

ルトワックは、ロシアと中国を比較して、
「ロシアは戦略を除いてすべてダメだが、
中国は戦略以外はすべて上手い」
と表現している。
やや大雑把かもしれないが、この言葉は言い得て妙といえよう。

・ルトワックが雑談の中で私に語ってくれた、
「戦略家としての心得」というものを紹介したい。

「潜在的な敵国が存在し、その敵国に対する軍備や
戦略を考える戦略家として取るべきなのは、保守的な態度だ」
ということだ。

・つまり戦略家というのは、
相手が100隻の軍艦を持っていると「公表」されているのであれば、
真偽はともかく、それを前提にして十分対抗できるだけの
能力を備えるように国家のリーダーたちに進言しなくてはならない、
ということだ。

※コメント
本書は、ルトワック自身が温泉旅館で語ったものを
訳者の奥山氏が翻訳&筆記したもののようだ。

合わせて約7時間あまりの温泉の口述筆記といえよう。
欧米の人の書いたものは、大抵難しく、
また翻訳すると、またまた難しくなる。

しかし、今回はルトワックが語ったことを
奥山氏がそのまま日本語に訳しているので、
わたしのような戦略素人にも読みやすく、
分かりやすく、面白く、たいへん嬉しかったです。
ルトワック本のさらなる続編も期待したいです。

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★著者、増井貴司、略歴。

1973年生まれ。大阪出身。

大学卒業後、モトローラ(イギリス)、

JTB(オーストラリア)、NEC(日本)でシステムエンジニアを経て現職に就任。

大学時代から海外に住むほど海外大好き人間で、妻は外国人。



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