書評 しょひょう : 日米同盟の解体は安部政権の登場によって辛うじて避けられた

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 日米同盟の解体は安部政権の登場によって辛うじて避けられた
  しかし内政は「大きすぎる目標が全てを空虚にしている」印象

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小川栄太郎『安倍政権の功罪』(悟空出版)
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 安倍政権の五年半を振り返って、類書にはない「戦略的」な観点から総括するのが本書である。

批判本もたしかに多いけれども書店でもほとんど売れていない。

 安部評価の本は平積みされている。

 なかでも政局の視点から安部政治を概括し、前向きに評価したのは阿比留瑠偉氏(『だから安倍晋三政権は強い』)、また内側からは、スピーチライターの谷口智彦氏が、安部の人物像を活写した(『安倍晋三の真実』)。

この二冊はそれなりに面白かった。

 小川氏は日本の国家の運命を視座に、安部政治を外交と内政にわけて、外交を高く評価するという特色をだしている。

なによりも他律的でふにゃふにゃで、防衛力も定かではなかった日本の立ち位置をしっかりと安定させ、安部は「重病人の日本が筋肉質な若者に生まれ変わった」とまでいうのである。

 オバマは親中路線にのめり込み、G2を目指した。

日本の頭越しに米中同盟結成の寸前のところまで突き進んだ。

おまけに日本には唐変木民主党政権が三代続き、米国の日本不信はマージナルな危機ラインまで落ち込んでいた。

 「オバマ政権はアジアへの関与政策を標榜しながらも、中国の海洋進出を牽制する動きがあまりにも微弱だった。

安部が外交始動一年で示した東南アジア政策は、戦後日本が初めて試みる積極的な安全保障上の関与政策だった」(60p)

 安部は「民主主義」と「人権」を掲げた。

 「近代世界の主導理念である民主主義と人権が、共産党による圧政と情報統制の国、中国の経済成長=台頭により、力を失いつつある。

近代史は自由民主という政治的イデオロギーと国民の経済的満足度が比例するという仮説のもとに進展してきたが、ここへ来て、その仮説が崩れつつあるのだ。

価値観が揺らぎ、そのなかで経済的な保護を求めて揺らぐASEANだからこそ、日本は自由民主の価値観におけるアジアの大国たることを宣言する」(68p)。

この安部ドクトリンを追いかけるかのように習近平はシルクロード構想を提唱した。

いま、その中国のバラマキと裏の意図を悟って、世界が中国に警戒心を深めた。

 親中路線を大きく修正したのが豪とマレーシアだった。

フィリピンにもその兆候がでてきた。

日本外交がしっかりしてきたからだ。

 ただし日露関係はプーチンとの個人的な関係を築き上げたものの「前のめりの憂鬱がある」と釘を刺す。

 ともかく安部外交は「日米同盟の解体は安部の登場によって辛うじて避けられた」のである。

しかし「オバマ政権=日本の民主党政権時代、アメリカが大きく親中に梶を切り、日本を捨てつつあったことを決して忘れてはならない」(116p)

 さて国内政治だが、安倍政権スタート直後から、「黒田バズーカ」(異次元の金融緩和)が炸裂し、株価が吹きあがって景況感に湧いた。

そのアベノミクスに疲労かがひたひたと近付いてきた。

 功罪の罪の方が内政に目立ち始めたと小川氏は冷静に言う。

 「大きすぎる目標が全てを空虚に見せている」(156p)。

第一がGDP600兆円達成目標、第二が子育て支援、希望出生率1・8という数値目標がでた。

第三は社会保障、とくわけ介護離職ゼロを打ち出した。

だが、「一億総活躍」も「地方創生」も看板倒れになる怖れがある。

ましてや「クール・ジャパン」は発想そのものが間違っていると手厳しい。

安倍政権の功罪を考える戦略的思考の中間報告である。
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