[太陽光発電は人を幸せにするか] (7)なぜ海は突然濁ったのか 軟らかい地盤…予想される難工事 メガソーラーができたらどうなる

[太陽光発電は人を幸せにするか] (7)

(1/4ページ) なぜ海は突然濁ったのか 軟らかい地盤…予想される難工事 メガソーラーができたらどうなる

泥水が流入して茶色く濁った八幡野漁港=平成29年9月27日、静岡県伊東市八幡野(木部悟さん撮影)

 「何だ、これは」

 映像撮影会社「アトリエロッキー空撮事業部」の伊藤尭(たかし)さん(78)=静岡県伊東市居住=はドローンを飛ばして撮影した映像を見て息を飲んだ。

 平成29年11月、伊東市八幡野の伊豆高原メガソーラーパーク発電所の建設予定地そばの尾入山の山頂に、穴が開いたように黄土色の地面がむき出しになった無残な姿があった。

 「無許可伐採じゃないか」

 伊東市に駆け込んだ反対派住民ら。同市の調査で森林法の林地開発許可を取らずに伐採された面積は約1・6ヘクタールに及ぶことが分かった。

 一枚の写真がある。八幡野漁港が一面、茶色に濁っている。

写真を提供したダイビングショップ経営、泉光幸さん(50)によると、撮影日は平成29年9月27日。

尾入山の山頂の伐採は、住民に発見された11月から少なくとも数カ月前には始まっていたと考えるのが自然だ。

 「以前はこんなことはありませんでした。尾入山の土砂も八幡野川を通って八幡野漁港に流入する。伐採と海の汚染が無関係とは思えません」

 伐採行為をしたのは、太陽光発電所を尾入山に建設しようとしていた東京都千代田区の太陽光発電業者「LAホールディングス(LA社)」。

 

(2/4ページ)

 LA社の社長は取材に「昭和48年1月、尾入山で別荘地を開発しようとした丸善建設(倒産、別荘地開発は頓挫した)が宅地造成許可を得ている。
 
その許可が生きている場所だと思った」とし、平成29年12月から水路や排水施設を整備する工事を行い、今年5月に完了した、と説明した。
 
「今年3月に林地開発許可の申請を受け付けてもらった」とも述べ、書類を提示した。

 同会の田久保真紀事務局長は「パネルを並べるための機材なども映っており、無許可のまま太陽光発電所を造成しようとしたのは明らかだ」と憤る。

だが、伊東市はこれまでのところ、業者が許可が不要だと誤認した可能性を認め、是正計画書の提出にとどめた。

 「尾入山のそばに(伊豆メガソーラーパーク発電所の事業主であるハンファエナジージャパン<東京都港区、ハンファ>が開発を進める)伊雄(いお)山があります。

伊豆高原メガソーラーパーク発電所が完成したら、八幡野の海はどうなってしまうのでしょうか」(伊藤さん)

 (八幡野のメガソーラー建設予定地で公園を建設する予定の「もりのこうえん」代表、岩渕寛二さん(66)は「以前から八幡野漁港が汚れることはありました。

ただ、あそこまで汚れたことはないと思います」と答えた)

 

(3/4ページ)

 尾入山の土地は現在、「SUNホールディングス」(SUN社、東京都中央区)が所有。

違法伐採発覚後は、太陽光発電所の工事は外見上はストップしている。

 この土地は平成18年、東京都内の大手マンションディベロッパーの子会社が購入した。

このディベロッパーの社長は静岡県伊東市八幡野出身で、立志伝中の人だ。

 尾入山の事情に詳しい不動産関係者が明かした。

「尾入山は斜面が急だし、北向きが多いんだな。東京・中央区の未来ホールディングス(HD)という会社がディベロッパーから土地を買って太陽光発電所をやるっていう話があったんだが、手付け金を払ったものの、残金の約8千万円が払われなかった。

だから話がつぶれたんだよ」

 未来HDは同じ伊東市の十足(とおたり)地区の太陽光発電所でも事業者として伊東市に認識されていた会社だ。

伊東市内で複数の事業を計画していたようだ。

 土地登記簿謄本を見ると、平成29年5月、尾入山の土地所有者はSUN社に移り、未来HDは十足の太陽光発電事業の権利(ID)も他社に渡し、伊東市からは手を引いている。

SUN社に尾入山の土地所有権が移った半年後に「違法伐採騒動」が起きたわけだ。

(4/4ページ)

泥水が流入して茶色く濁った八幡野漁港=平成29年9月27日、静岡県伊東市八幡野(木部悟さん撮影)泥水が流入して茶色く濁った八幡野漁港=平成29年9月27日、静岡県伊東市八幡野(木部悟さん撮影)

 伊豆半島の地質に詳しい伊豆半島ジオパークミュージアム(静岡県伊豆市)の鈴木雄介・専任研究員は「伊東の地質は約20万年前に天城山が最後に噴火した溶岩流の跡に、様々な砂や石、火山灰などが長期間、堆積したもの。

約4千年前の大室山の噴火で出た溶岩は、赤沢別荘地の方向に流れたので、伊豆半島の他の地区に比べると、伊雄山は地質が軟らかい」と話す。

 先の不動産業者は「伊雄山も尾入山も工事が非常に難しい。

岩盤になかなか当たらないから。

造成費は相当なものになると思う。

50億~60億円かかるんじゃないかな」と話す。

 泉さんら海の男たちは「メガソーラーができたら、八幡野の海は大変なことになる」と話す。

不動産業者らの話を聞くと、決して杞憂ではなさそうだ。

 岩渕さんは難工事が予想されることは認めたものの「たとえ工事費が50億円かかっても、採算は合う。

砂防ダムを八幡野川に設置するなどして、災害に強い川を目指す」と話している。

(WEB編集チーム 三枝玄太郎)

【太陽光発電は人を幸せにするか】(7)なぜ海は突然濁ったのか 軟らかい地盤…予想される難工事 メガソーラーができたらどうなる

雨が降った後の八幡野漁港。尾入山での無断伐採が行われた前後から、雨が降ると茶色に濁るようになったと、反対する住民は主張している(アトリエロッキー空撮事業部撮影、提供)

コメントを残す

このページの先頭へ