【太陽光発電は人を幸せにするか】(8) 積極誘致姿勢だった佃弘巳前市長の「影」が徘徊する静岡県伊東市

【太陽光発電は人を幸せにするか】
(8) 積極誘致姿勢だった佃弘巳前市長の「影」が徘徊する静岡県伊東市

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8月2日に始まった伊豆高原メガソーラーパークの現場事務所の建設工事=8月3日、静岡県伊東市八幡野(三枝玄太郎撮影)8月2日に始まった伊豆高原メガソーラーパークの現場事務所の建設工事=8月3日、静岡県伊東市八幡野(三枝玄太郎撮影)

 記録的な猛暑に日本列島が見舞われた8月2日、静岡県伊東市八幡野の山林にヘルメット姿の作業員らが集まった。

伊豆高原メガソーラーパーク発電所のプレハブの現場事務所を設置する作業が始まったのだ。

同月10日には土地の掘削と樹木伐採を実施。

伊東市は「条例違反だ」として8月15日付で経済産業省に報告書を提出した。

 8月3日、静岡県熱海市の熱海駅前にあるマクドナルド2階で、反対運動を支持してきた中田次城県議(52)はよく通る声でこう言った。

 「訴訟になっても、我々(反対派住民側)は負けませんよ。

ハンファ側が出した書類には数値の改竄(かいざん)が100カ所以上あった。

彼らが改竄していなかったら、4月末には着工できたはずです。

静岡県が森林法に基づく林地開発許可を出したのは7月2日。

林地開発と宅地造成の両方の許可がなければ着工とは見なされない。

それは静岡県もそう言っているんです」

 小野達也・伊東市長(55)は、今年6月、市全域を「抑制区域」と指定し、太陽光発電所を建設する場合は市長の許可が必要で、1万2千平方メートル(1・2ヘクタール)を超えるものは原則認めないなどとする全国でも先駆的な条例を施行した。

先行して平成27年7月に静岡県富士宮市が同様の条例を施行しており、静岡県内で2例目だ。

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 伊豆メガソーラーパーク合同会社の発電所を建設すれば、住民の主張通り条例違反なのか、違うのか。

 合同会社側は「2月に宅地造成法に基づく許可を得ているので、条例前に着工したとの認識だ。

また書類の改竄はなく、ミスだ。

それは行政側も認めている」と主張した。

 伊豆高原メガソーラーパーク発電所は40ヘクタールを優に超えるので、条例の対象となれば、建設が不可能になる。

 業者側の主張通り、着工が2月ならば条例の対象外、6月1日以降ならば条例の対象だ。

住民側は8月31日、工事差し止めなどを求め、静岡地裁沼津支部に提訴した。

あくまでも工事中止を目指す構えだ。

 静岡県伊東市は太陽光発電所の総数はそれほど多くない。

だが、同市の太陽光発電所の顕著な特徴は、大規模太陽光発電所(メガソーラー)が多いことだ。

 激しい住民運動が起きている八幡野のほかにも、鎌田地区には「ブルーキャピタルマネジメント」(東京都港区)を主体とする合同会社「伊東メガソーラーパーク」による、伊豆メガソーラーパーク発電所とほぼ同規模の発電所の建設計画がある。

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 十足(とおたり)地区では、未来ホールディングスから合同会社「ティワイケイジャパン」(東京都江東区)が建設計画を引き継いだ。

宇佐美地区では「日本グリーン合同会社」(東京都中央区)が1万キロワットを超す大規模な太陽光発電所建設を計画している。

これらは佃弘巳前市長(71)のころに計画が持ち上がった。

 宇佐美地区の太陽光発電所建設予定地は、もともとは伊豆市の産業廃棄物処理業者が廃棄物処理場の予定地としていた場所だ。

 「江戸城の石垣に使われた石は伊豆産のものが多いのですが、産廃処分場の予定地は、その石切場の遺跡が近くにありました。

市議だった方が反対運動の先頭に立ち、産廃処分場の計画が潰えてしまいました。

それが太陽光発電というので、驚いている人は多いのです」(地元住民)。

だが、条例化によってこの場所の建設計画も日本グリーンにとっては風前の灯だ。

 十足地区の太陽光発電所建設予定地は、計画当時の区長が小野市長の親戚にあたり(現在は別の人が区長)、住民の反対もなかった。

十足区の区有地がかなり含まれている。

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 「JR東日本が最終的な土地所有者となる話もあったといいます。

だが、小野市長は首を縦に振らなかった」(別の伊東市民)。

 ある東京都内の事業者は「佃さんは、人を介して会えば、『頑張りなさい』と励ましてくれた」と打ち明ける。

 逆に小野市長は就任当初から大規模太陽光発電所(メガソーラー)に否定的だった。

条例の施行はまさに小野市長の強い意思を示したものともいえる。

 ある太陽光発電業者は「佃さんのころと違い、小野市長になってから伊東市の姿勢が太陽光に厳しくなった」とこぼす。

 いくつかの業者は伊東市との訴訟に備えた動きを始めている。

太陽光業界の関係者によると、すでに「伊東市を訴える」と通告している業者も複数いる。

 佃前市政から180度転換した小野市政。

だが、伊東市には佃前市長の「影」が今も徘徊している。

(WEB編集チーム 三枝玄太郎)

 

2018.9.16 08:00更新【太陽光発電は人を幸せにするか】(8) 積極誘致姿勢だった佃弘巳前市長の「影」が徘徊する静岡県伊東市

佃弘巳前市長=平成27年、伊東市役所(広池慶一撮影)

ニュース写真

  • 8月2日に始まった伊豆高原メガソーラーパークの現場事務所の建設工事=8月3日、静岡県伊東市八幡野(三枝玄太郎撮影)
  • 大規模な太陽光発電所が計画されている山林。地元に目立った反対の声はないが、小野達也市長は条例の対象になるとして、許可しない方針だ=3日、静岡県伊東市十足(三枝玄太郎撮影)
  • 大規模な太陽光発電所が計画されている山林。佃弘巳前市長が退任後も特別顧問として市に残り、業者を静岡県の担当幹部に面会させたことが明らかになっている=3日、静岡県伊東市十足(三枝玄太郎撮影)
  • LAホールディングスが運営予定の太陽光発電所の予定地。無断伐採が明るみになり、この数十倍の規模がある伊豆高原メガソーラーパークが完成したときの八幡野漁港への悪影響を心配する声もある=今年6月、静岡県伊東市八幡野(アトリエロッキー空撮事業部撮影、提供)
  • 日本グリーン合同会社が建設予定の大規模太陽光発電所計画地=7月23日、静岡県伊東市宇佐美(三枝玄太郎撮影)
  • 日本グリーン合同会社が建設を計画している大規模太陽光発電所予定地。もとは産業廃棄物処分場の予定地だった=7月23日、静岡県伊東市宇佐美(三枝玄太郎撮影)
  • 経済産業省の新エネルギー課長に陳情する中田次城・静岡県議(右から2人目)=8月22日、東京都千代田区の経済産業省(三枝玄太郎撮影)

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