リアルインサイト:水道法改正案が衆院通過

こんにちは。
リアルインサイトの今堀です。

少し前のことになりますが、
7月6日付でお届けした

“オウム真理教事件死刑囚の死刑執行と
「死刑制度」”

というメールの中で、私はこう
書きました。

「なぜこのタイミングなのかは不明ですが」

続けて、

「オウム事件関連の裁判がすべて終了し、
 死刑囚が証人として出廷する可能性が
 なくなったことが大きいのかもしれません」

という推測もお伝えしています。

もちろん、本当の理由は知る由も
ありません。

しかし、

全日本国民にとって重大な出来事の一つが
この報道によってかき消されていたことに、
その時点では、

全く気づいていませんでした。

その重大な出来事とは、

【水道法改正案】

が衆議院で可決されたことです。

水道法改正案が衆院通過
広域化で老朽化対策急ぐ
(2018年7月5日・日本経済新聞)
http://b56.hm-f.jp/cc.php?t=M4691&c=12415&d=3822

結果として、前回国会での成立は
見送られたものの、

水道法改正案、今国会見送りへ
(2018年7月13日・日本経済新聞)
http://b56.hm-f.jp/cc.php?t=M4692&c=12415&d=3822

事実上会期切れによる継続審議と
なったものですので、近い将来の
成立可能性は高いでしょう。

私と同様に、

「水道法改正案の衆院通過」

にお気づきにならなかった方も、
少なくないのではないでしょうか。

ネット検索でご確認いただければ、
大手マスコミの報道の少なさに
驚かれると思います。

先程の日経記事も実に簡素なもので、
紙面で言えば、

「ベタ記事」

扱いでしょう。

さらに、

・水道事業者は赤字体質のところが多い
・老朽化した水道管の更新が遅れている

という問題点を挙げているのですが、

・広域化して経営の効率化をはかる
・民間企業に運営権を売却できる
 仕組みを盛り込んだ

ことによってこれらの解決が実現
するかのような書きぶりです。

しかし、

本当にそうでしょうか?

実は、1980年代から

「水道民営化」

の試みは世界各国でなされてきました。

その結果、起こったことは、
実に惨憺たるものです。

「世界の事例を見てみると、民営化後の
 水道料金は、ボリビアが2年で35%、
 南アフリカが4年で140%、
 
 オーストラリアが4年で200%、
 フランスは24年で265%、イギリスは
 25年で300%上昇している」

「高騰した水道料金が払えずに、
 南アフリカでは1000万人が、
 
 イギリスでは数百万人が水道を
 止められ、フィリピンでは水企業群
 (略)によって、

 水道代が払えない人に市民が水を
 分けることも禁じられた。」
(いずれも堤未果著『日本が売られる』
 P.17より)

ここに登場する「水企業群」には、
あなたもご存じの日本の大手企業の
名前も挙がっています。

そして、民営化による弊害は料金の
高騰だけではありません。

安全性を含めた水質の問題も多数
生じています。

「水道事業の24%が民営化されている
 アメリカでは、1998年に水道を民営化
 したジョージア州アトランタ市が、

 <水道から泥水が噴出する>
 <蛇口から茶色い水が出てくる>
 などの苦情が多発したため、

 5年後の2003年に再び市営に戻す
 ことを決定、痛い目に遭っている」
(前掲書P.22より)

さらに、

最も早い段階で水道が民営化された
南米では、ボリビアのように

反対運動が暴動(コチャバンバ
水紛争)にまで発展した例すら
あるのです。

結果として、世界的潮流は

「水道再公営化」

に向かっているのですが・・・、

これまでにもお伝えした通り、
これに逆らって「水道民営化」を
加速させようとしているのが、

情けないことに、我が日本です。

そして、実は、

我が国における「水道民営化」も、
7月5日の衆院での法案可決で突然始まった
わけではありません。

以前から、着々と進められてきたもの
なのです。

例えば、麻生副総理兼財務大臣の
この発言をご存じでしょうか?

“2013年4月に麻生太郎副総理が
「世界中ほとんどの国で民間会社が
 水道事業を運営しているが、

 日本では国営もしくは市営・町営で
 ある。これらを民営化したい」
 という主旨の発言をしている”

政府が検討する「水道事業」民営化の
不安要素
(2018年9月30日, NEWSポストセブン)
http://b56.hm-f.jp/cc.php?t=M4693&c=12415&d=3822

驚くべきことに、この記事で紹介されて
いる麻生氏の発言がなされたのは、

米国の戦略国際問題研究所(CSIS)
においてです。

CSIS Live
http://b56.hm-f.jp/cc.php?t=M4694&c=12415&d=3822
(水道民営化に関する言及は48分頃~)

重要閣僚が、このような発言を外国で
していることについて、当の日本国民が
殆ど知らないままだとしたら、

とても恐ろしいことではないでしょうか。

そして、水道法の改正案が衆院を通過
した時期は、皆様のご記憶にも新しい

「平成30年7月豪雨」(気象庁命名)

の真っ只中でもありました。

このような災害の最中に、最重要な
インフラを破壊しかねない決定が
なされたことになります。

また、

水道法改正案が審議入りしたのは、6月に
発生した大阪北部地震によって大きな
被害が出たことで、

「老朽化した水道」

という問題がクローズアップされたため
だという指摘もありました。

オウム死刑執行とW杯に埋もれた
「水道民営化」問題の“重要発言”まとめ
(2018年7月7日, 文春オンライン)
http://b56.hm-f.jp/cc.php?t=M4695&c=12415&d=3822

それどころか、

世界の現代史を振り返れば、こうした
災害による混乱を利用して、急進的な
改革が強行される例が多いのです。

カナダ人ジャーナリストのナオミ・
クライン氏が2007年(邦訳は
2011年)に著した、

『The Shock Doctrine
 (ショック・ドクトリン)』

という書籍があります。

「惨事便乗型資本主義」

と訳されていますが、

徹底した市場原理主義・金融資本主義を
主張した経済学者ミルトン・フリードマンの

「真の変革は、危機状況によってのみ
 可能となる」

という言葉を批判して、クライン氏が
名付けたものです。

「大規模なショックあるいは危機をいかに
 利用すべきか。フリードマンが最初に
 それを学んだのは、

 彼がチリの独裁者であるアウグスト・
 ピノチェト陸軍総司令官の経済顧問を
 務めた一九七〇年代半ばのことだった」
(同書P.7より)

同書では、ピノチェト大統領が軍事
クーデターによって政権を掌握した
1970年代の南米チリで、

フリードマンと、その弟子筋にあたる
「シカゴ・ボーイズ」が何を行ったのかを
皮切りに、

イラク、ロシア、アジア諸国、アフリカ
諸国における広範な事例が取り上げられて
います。

ハリケーン災害の混乱に乗じて教育改革が
強行されるなどした米国も、決して例外では
ありません。

経済評論家の三橋貴明氏は、この
「ショック・ドクトリン」が日本でも
用いられた事例として、

「再生可能エネルギーの
 固定価格買取制度」

を挙げられています。

「ザ・ショックドクトリンといえば、
 我が国では文句なしでFIT(再生
 可能エネルギー固定価格買取制度)で
 ございます」

FIT 発電税の導入を!
(2017年7月1日,
 新世紀のビッグブラザーへ)
http://b56.hm-f.jp/cc.php?t=M4696&c=12415&d=3822

東日本大震災による電力危機に対応すると
いう名目で導入された同制度が、実は
災害の混乱を利用した

「ショック・ドクトリン」

の一つであったという指摘には、
説得力があると思います。

また、

同記事で言及されている

「レント・シーキング
 (rent seeking)」

とは、

「民間の営利企業が政府に影響を与え、
 法改正や制度改革を実行させることで、
 超過利潤(レント)を得るための活動」

のことです。

2001年にノーベル経済学賞を受賞した
アメリカの経済学者ジョセフ・
スティグリッツ氏は、

レント・シーキングと民営化について
次のように述べています。

“ 市場原理主義者は、民営化によって
 エコノミストの言う「レント追求」※が
 減るという決まり文句を口にする。

 役人が政府事業の収益をかすめ取ったり、
 自分の友人に契約や仕事を斡旋したり
 することができなくなるというのである。

 しかし、その言い分とは反対に、民営化は
 事態をいっそう深刻にしてきた。

  今日、
 多くの国では、民営化は「収賄化」だと
 揶揄されているほどである”
※レント・シーキング
(ジョセフ・スティグリッツ著
『世界を不幸にしたグローバリズムの正体』
 P.93より)

要するに、権力者の周囲に存在する利権を、
「俺達にも寄越せ」と言っているに過ぎない
ように思えますね。

そして、ショック・ドクトリンや
レント・シーキングの問題は、これに
とどまるものではありません。

2014年に86歳で亡くなった宇沢弘文
(うざわ・ひろふみ)氏という
経済学者が提唱した、

「社会的共通資本」

という概念があります。

以前にもご紹介した、

『自動車の社会的費用』

の刊行時から提唱されていた
ものなのですが、その定義は

「人々の生活の基盤を成し、基本的
 人権と関わるような自然環境・
 社会的装置・社会制度」

のことであり、

「大気・河川・森林などの自然、
 道路下水道などのインフラ、医療・
 教育などの福祉制度を総合したもの」

です。

『宇沢弘文の経済学
 社会的共通資本の論理』
 P.299「解説」より

宇沢氏が強調していたのは、

「社会的共通資本」

を野放図なビジネスの対象とすることの
誤りです。

ケインズの師であった英国人の
経済学者アルフレッド・マーシャルが
講演で用いたという有名な言葉があります。

「冷静な頭脳と温かい心を持て
 (cool heads but warm hearts)」

京都大学レジリエンスユニット特任教授の
青木泰樹(あおき・やすき)氏は、
ご著作

『経済学者はなぜ嘘をつくのか』

の冒頭にこの言葉を掲げられ、経済政策の
目的は、

「経世済民――世を経(おさ)め
 民を済(すく)う」

ことであるとして、「温かい心を失った」
主流派経済学者を批判されています。

私は、宇沢氏こそ、

「冷静な頭脳と温かい心」

を体現された経済学者であったと思って
います。

しかし、残念ながら

弱者への眼差しや社会への配慮を欠いた、
「温かい心を失った」経済学が、

さまざまな問題を世界で引き起こしてきた
のが、

「冷戦後」

の世界なのかもしれません。

一部の富裕層がますます豊かになって行く
中で、大多数の人々がどんどん貧しくなって
いき、

農業、医療、介護、教育等といった
「社会的共通資本」に次々と値札が
つけられています。

世界では、こうした苦境に陥った人々に
よる抵抗のうねりが現れつつあるように
思いますが、

「水道民営化」のみならず、我が日本は
むしろ周回遅れでこうした状況に突入
しようとしているのです。

冒頭でご紹介した『日本が売られる』の
著者、堤未果(つつみ・みか)氏は、

2008年に刊行され、ベストセラーとなった

『ルポ 貧困大国アメリカ』

で、大多数の米国民が陥っている、
驚くべき惨状を明らかにされました。

その後も、精力的な取材・執筆活動を
続けられており、10月4日に発売された
ばかりの

『日本が売られる』

では、

「水道民営化」のみならず、森友学園
問題が騒がれている間にひっそりと
廃止されてしまった

「種子法」

を始め、

・国民皆保険制度の改革
・混合診療の解禁
・放射性廃棄物の利用
・農業のビジネス化
・カジノ解禁
・遺伝子組み換え作物の流入
・外国人労働者の受入拡大

等現在進行中の「危機」を多数
取り上げられています。

同書の目次をご覧いただくだけで、
いかに多くの問題が同時に進行
しているかに驚かれることでしょう。

その堤氏が、今月15日に公開予定の
ザ・リアルインサイト10月号
インタビューに登場されます。

「貧困大国アメリカの実情を我々が知らねばならない理由」」
「報道されない“日本が売られる”現実」

の2つのテーマで、お話をお伺い
しておりますので、

会員の皆様は、是非楽しみにお待ち
下さい。

なお、

今回ご紹介した書籍は、以下に
一覧にしております。

まずは、発売されたばかりの、

『日本が売られる』

から、お目通しいただければと思います。

【引用図書】
『日本が売られる』
(堤未果著, 幻冬舎新書, 2018年)
http://b56.hm-f.jp/cc.php?t=M4697&c=12415&d=3822

『ショック・ドクトリン〈上〉
 ――惨事便乗型資本主義の正体を暴く』
(ナオミ・クライン著, 岩波書店, 2011年)
http://b56.hm-f.jp/cc.php?t=M4698&c=12415&d=3822

『ショック・ドクトリン〈下〉
 ――惨事便乗型資本主義の正体を暴く』
(ナオミ・クライン著, 岩波書店, 2011年)
http://b56.hm-f.jp/cc.php?t=M4699&c=12415&d=3822

『世界を不幸にしたグローバリズムの正体』
(ジョセフ・スティグリッツ著, 徳間書店,
 2002年)
http://b56.hm-f.jp/cc.php?t=M4700&c=12415&d=3822

『自動車の社会的費用』
(宇沢弘文著,岩波書店,1974年)
http://b56.hm-f.jp/cc.php?t=M4701&c=12415&d=3822

『宇沢弘文の経済学
 社会的共通資本の論理』
(宇沢弘文著, 日本経済新聞出版社,
 2015年 ※2005年の私家版を再編集
 して刊行された)
http://b56.hm-f.jp/cc.php?t=M4702&c=12415&d=3822

『経済学者はなぜ嘘をつくのか』
(青木泰樹著, アスペクト, 2016年)
http://b56.hm-f.jp/cc.php?t=M4703&c=12415&d=3822

『ルポ 貧困大国アメリカ』
(堤未果著, 岩波新書, 2008年)
http://b56.hm-f.jp/cc.php?t=M4704&c=12415&d=3822

また長文に戻ってしまったのみならず、
まとまりのない文章になってしまい、
すみません。。。
 

それでは、また。

今日も皆様にとって幸多き1日に
なりますように。

日本のよりよい未来のために。

私達の生活、子ども達の命を守る
ために、ともに歩んでいけることを
切に願っています。

リアルインサイト 今堀 健司

このメールマガジンをお知り合いに
ご紹介いただける場合は、こちらの
URLをお伝え下さい。

【ザ・リアルインサイト無料版】
 ご登録フォーム
https://b56.hm-f.jp/index.php?action=R1&a=9&g=2&f=3

コメントを残す

このページの先頭へ