【石平のChina Watch】安倍首相を待つ2つの罠

【石平のChina Watch】安倍首相を待つ2つの罠

  この原稿が掲載されてからおそらく約1週間後、安倍晋三首相は訪中の旅に出かけているはずである。

習近平政権は、初めて日本国首相を賓客として招待したわけだが、彼らは一体どのような構えで安倍首相を迎え、日本に対してどのような外交攻勢をかけてくるのだろうか。

 習近平主席らはまず、安倍首相に対して「関係改善」への意欲を大いに示してくるのであろう。

アメリカとけんかするときに日本に接近してくるのは中国伝統の外交戦略の一つである。

今はまさに、習主席は心にもない「日中友好」にすがらなければならない時期である。

 この「中国版植民地主義」の餌食となっているアジア地域においても、「一帯一路」に対する反発や離反が広がっている。

8月に、マレーシアのマハティール首相が同国における「一帯一路」の主要事業の中止を発表したことは最近の一例である。

 習主席の「一帯一路」は今や風前のともしびであるが、それを窮地から救い出して延命させるために、中国側は、経済力と国際的影響力のある日本に助けを求めてくるであろう。

9月11日、中国の程永華駐日大使が都内で講演して「一帯一路」への日本の協力に「期待」を表明したのは、まさに中国側のこのような思惑の表れである。

しかし、安倍首相は外交辞令としても「協力する」と言ってはいけない。

この一言を発しただけで、日本は「中国版植民地主義」の加担者だとみなされ、国際社会における日本のイメージダウンにつながるからである。

 安倍首相を待ち受けるもう1つの罠は、中国が必ずや「自由貿易」の大義名分を振りかざして日本を米中貿易戦争に巻き込もうとすることである。

現に、中国の李克強首相は今月10日、福田康夫元首相との会談で「日本とともに自由貿易の発展を擁護したい」と述べ、日本に連携を呼びかけた。

安倍首相に対しても中国側は当然、より一層の熱意で「連携」を働きかけてくるのであろう。

 だから、安倍首相が今回の訪中に当たって、関係改善に乗り出すのも「友好」を語るのも問題はないと思うが、習近平政権対日外交の「下心」に留意して中国に利用されるような発言を控えてもらいたい。

 外交とは言葉による戦いだから、首相の発する一言一言には、日本の国益と名誉が関わっているのである。

                  

【プロフィル】石平(せき・へい) 1962年、中国四川省生まれ。北京大学哲学部卒。88年来日し、神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了。

民間研究機関を経て、評論活動に入る。『謀略家たちの中国』など著書多数。

平成19年、日本国籍を取得。

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