安倍首相の対中外交への批判 古森義久

 安倍首相の対中外交への批判 古森義久

「日本の安倍晋三首相は米国が中国の無法な膨張を抑えようと対決の姿勢を強めたときに中国に友好を求め、日米同盟やトランプ大統領を害すことになる」

 トランプ政権にも近い外交専門の識者からこんな厳しい非難が表明された。

しかも安倍対中外交が日本自体にも被害をもたらし、失敗するとの予測だった。

 この非難は米国の政治外交雑誌「ナショナル・インタレスト」の10月末発刊の最新号に載った「日本の中国接近はなぜ失敗なのか」と題された論文だった。

 筆者は二代目ブッシュ政権の国務省で北朝鮮人権問題を担当し、トランプ政権でも国務省の政権引き継ぎ班の要員だったクリスチアン・フィトン氏である。

アジア問題にも詳しい政治外交の専門家で2013年に出た「スマート・パワー」という書の著者でもある。

現在はワシントンの研究機関「ナショナル・インタレスト・センター」の上級研究員を務める。

 同論文は副題に「米国が中国の貿易問題や南シナ海での威嚇をついに抑え始めたときに、日本政府はなぜ中国への融和的な接近をするのか」と記したように、安倍政権の最近の中国への姿勢を辛辣に批判していた。

その要旨は次の通りだ。

 ・安倍首相は10月下旬の訪中で中国との絆を経済からスポーツまで広げることを宣言し、中国がその影響力と腐敗とを世界に広げる「一帯一路」関連のインフラ事業への参加を言明したが、この動きは同首相が友人と呼ぶトランプ大統領の政策への障害となる。

 ・米国政府がペンス副大統領の演説が明示するように融和が失敗した対中政策を歴史的に変革し、対決を基調としたこの時期に安倍首相は日中関係を「競争から協調」だとしてまさに逆行させ、中国の不公正貿易慣行を正すための米国の関税制裁の効果をも減らす。

 ・日本の新対中政策がこのまま進み、米中貿易紛争で中国を利すれば、トランプ政権は日本との貿易交渉で自動車関税などの対日圧力措置をとり、防衛面でも日本の防衛費のGDP1%以下という低水準への不満を表明し、安倍首相はトランプ大統領を友人と呼べない事態も起きるだろう。

 以上のようにフィトン氏の論文は米国側一般の反応という形で安倍首相への威嚇とも響く警告を表明していた。

そのうえで中国は北朝鮮問題や海洋戦略で日本にとっても不利な行動を多々、とったままである点をも強調していた。

だから中国は日本に対して従来の政策を変えてまで融和や友好の姿勢をとっているわけでは決してない、ともいう。

 確かに米中と日中の両関係の現況を表面でみる限り、中国に対して米国が「協調から競合や対決へ」と明確にうたう一方、日本は「競争から協調へ」と、まさに正反対である。

だからこの種の安倍政権批判が米側のとくにトランプ政権周辺から出ることも一面、自然だといえよう。

 ただし米国側でもやや異なる見解もある。

中国政府の動向やトランプ政権の対中政策に詳しい米海軍大学前教授のトシ・ヨシハラ氏は「日米両政府間では日本の対中接近についても事前のかなりの協議があり、フィトン氏の指摘はやや過剰かもしれない」と述べた。

だが安倍政権にとっての米側のこの種の懸念は決して軽視できないだろう。

(ワシントン駐在客員特派員)

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