256万人の「移民予備軍」に口ごもる自民党の矛盾

テーマ:「移民法案」このままで大丈夫か。
外国人労働者の受け入れ拡大を図る出入国管理法改正案が衆院を通過した。案はこれまで認めなかった単純労働を容認し、実質的に外国人の永住に道を開く内容である。事実上の「移民法案」とも揶揄され、将来に禍根を残しかねない。労働市場の人手不足が大義名分とはいえ、なぜ急ぐ必要があるのか。

 256万人の「移民予備軍」に口ごもる自民党の矛盾

『坂東忠信』 2018/11/28

坂東忠信(外国人犯罪対策講師、作家)
 
 日本経済新聞によると、2017年半ばまでの段階で、技能実習生の失踪は既に年間7千人を超えている。
 
受け入れ企業側も実習させてやる程度の賃金で、ろくな実習もないままに単純労働をさせているケースもある。
 
 今や実習生は情報端末を駆使しながら、日本各地で働く同国人や友人のネットワークで、待遇や賃金がより良い職場を求め脱走するが、在留資格が更新できずに不法滞在者となる。
 
新たな職場の雇用側も人手不足のため、そこに働く外国人従業員のツテで受け入れる。
 
 しかし、彼らも人間である。
 
働いている時間以外にも休み、遊び、恋をして、子供をつくる。
 
さらなる収入を得たいし、楽もしたいし、苦しくなれば犯罪に走ることもある。
 
 外国人の「道徳格差」はインターネット上で明確に認識されている。
 
だが、国際的規模に膨れたカネのうなる大企業を広告主とするオールドメディアは、スポンサーの海外でのイメージを守るため、問題の核を「文化の違い」と表現し、道徳レベルの差から発生する国内外国人問題の核心に迫ろうとしない。
 
 こうした問題を放置し、改善することなく、さらなる労働力を呼び込むために、出入国管理法が改正されようとしている。
 
自民党は、票や政治献金を生み出す企業や団体の要求を拒むことができないからだ。
 
 改正の目玉は「特定技能1号・2号」という在留資格の追加だ。
 
改正案は、1号に「相当程度の知識または経験」、2号に「熟練した技能」を要求し、外国人材を受け入れるとしているが、各号の求める具体的水準は不明だ。
 
 その資格の詳細に関する説明は他に譲るが、改正案に対して、自民党法務部会では発言議員の9割が反対を表明したという。
 
しかし、残る1割が賛成側に立ち、現実の倒産要因にまでなっている「人手不足解消」の大義名分を掲げて押しまくった。
2018年10月、自民党法務部会であいさつする長谷川岳部会長(奥中央)
2018年10月、自民党法務部会であいさつする長谷川岳部会長(奥中央)
 
 反対の議員も「具体的に何人が何年必要なのか」「要らなくなったら『帰れ』でいいのか?」と押し返すなど激しいせめぎ合いを展開した。
 
各業界団体のヒアリングも交えた討議の結果、安易な枠の拡大や基準の引き下げで移民政策にならないよう、法務部会と厚生労働部会で具体的なハードルを設定した部会決議を法案に付した。
 
 
「国民も外国人も不幸になる」
 
しかし「与党グセ」がついている自民党は、いつまた野党に落ちて、このハードルが取り払われるかなど考えていない。
 
まるで「玄関」は開放されたと言いつつも、上がり口を高さ2メートルにし、天井下30センチしかない隙間をくぐって入る客だけを歓迎するかのようだ。

 
 でも「家」の中を見渡せば、窓にはスパイ防止法という「網戸」さえなく開けっ放しで、泥棒がよく入る上に、「家庭崩壊」寸前で「だからレベルの高い外国人メイドが必要」というオヤジをあなたは信用できるか。
 
私たちはそんな国「家」の家族なのだ。
 
 たとえ実習生が高度プロフェッショナル人材であっても、帯同する家族も歓迎すべき人材とは限らない。
 
また、実習生本人も歓迎に値する人材で有り続けることを期待したり、矯正することはできない。
 
 そして、本人が労働意欲を失ったり、何らかの理由で評価に値する技能を発揮することが不可能になっても、企業は面倒を見てくれない。
 
収入に困った彼らによる犯罪やその被害回復の責任がどこに帰するのかも不明だ。
 
まさに、国民も外国人も不幸にする改正法案である。
 
 おまけ、国別の枠の割り当てもないため、隣国の中国や韓国の人材が多くなるのは必定だ。
 
滞在中に母国崩壊が発生すれば、彼らは日本に居ながらにして難民になる。
 
 実際に米国が進める「米中経済戦争」は政権転覆や社会の混乱、つまり国外脱出者が現れるレベルを目指し、締め上げにかかっている。
 
そうして、難民発生の際には、国際社会が日本に対して国庫を傾けるほどの保護を求めてくるに違いない。
 
 一方、単純労働者を求める労働市場では、難民を含む外国人材の雇用で、大企業の上層だけが潤い、収入格差は広がるばかりだ。
 
彼らへの厚生や福祉で不可避となった消費増税がデフレを加速し、日本人は疲弊する。
※写真はイメージです(ゲッティイメージズ)
※写真はイメージです(ゲッティイメージズ)
 今でさえ円安路線を維持した日本は既に国際的デフレ国家であり、日本人の賃金は先進国内で驚くべき低レベルだ。
 
外国人旅行客の目には、サービス最高の「おもてなし激安国家」と映るのだから、オーバーステイしたくなる気持ちも理解できる。
 
 そもそも、問題は「労働力不足」である。
 
ニートが高齢化しても、シングルマザーになっても生きていけるほどの社会制度が、きしみながらこれを支え、今やその福祉制度が外国人に食われるほど、生きる力と競争する意欲を失った日本人が問題なのだ。
 
 
「批判覚悟の提案」
 
そこで、批判を覚悟の上で提案したい。
 
海外展開を行っている大企業はアベノミクスの恩恵を受け、株価も上昇している。
 
ところが、今の経営陣はバブル崩壊の経験者であるため、内部留保を積み上げ、賃上げによる支出を恐れ、さらなる安価な労働力を外国人に求める。
 
そこで、労働基準法にでも「企業トップと末端の賃金格差は○倍まで」と定めれば、さっぱり進まない賃上げもトップから進めざるを得なくなり、社会問題である収入格差も緩和、労働意欲も上がるのではないか。

 
 また、企業が大卒や新卒にこだわらず、独自の採用基準で若い人材を求めれば、就職のためのカタパルト(射出機)と化した意味無き大学は淘汰(とうた)され、大学全体のレベルも向上して洗練されるだろう。
 
 こうして、企業が学歴偏重の採用基準を変えれば、親は借金してまで子供を大学に送る必要がなくなり、その資金を老後に回せる。
 
子供は10代から社会に出ていれば、20代後半にはベテランの域に達するので、結婚資金も貯(た)まる。
 
短期的には成婚率が、中期的には出産率と出産人口が、長期的には労働人口も上がるのではないか。
 
 そのためには企業トップの意見を尊重する自民党の他に、勤労者のための、健全で主体性のある野党が必要だ。
 
本来であれば、企業に君臨する「ブルジョア階級」の収入を規制し、「プロレタリア」の賃金を底上げする政策については、日本共産党あたりに期待したいところではある。
 
また、「自民あっての反自民」を貫く立憲民主党は、今回の実質的移民政策にも反対するのだろうか。
 
 安倍晋三内閣は「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太方針)に「移民政策を採らない」としているが、自民党議員は移民の定義を知らないか、口にできない。
 
国連人口部の定義によれば、移民とは「主権のある母国を1年以上離れて外国に暮らす人」を指す。
 
そして、この移民の概念には、密入国者や不法滞在者、帰化した初代が含まれる。
 
 既に日本には、留学生を始めとする移民と「移民予備軍」が256万人以上も存在するが、自民党議員がこれを口にすることは骨太方針の矛盾をさらけ出すことになる。
 
だから「移民」という言葉に異を唱え、改善できる議員はいないのだ。
 
 そもそも、議員の仕事は理想の発表や世論啓発ではなく、法の立案や審議である。
 
法改正案に部会決議文で歯止めを盛り込んだ党内の反対議員も、議論に参加し論議を尽くした以上は、組織としての決定に文句をつけることはできない。
 
それを期待するのが酷であることは、何らかの組織に属する社会人ならわかるはずだ。
自民党本部=2018年9月(納冨康撮影)
自民党本部=2018年9月(納冨康撮影)
 だが、読者諸兄は昨年の流行語をお忘れか。
 
そう、ここに「忖度」が必要である。
 
発言議員の9割ほどいた反対議員は心の中で、決議文を付けても力が及ばず手を離れたこの法改正案を誰かに潰してほしいのだ、と私は「忖度」した。
 
 国民の政治参加は選挙のみにあらず。
 
世論を大いに盛り上げ、燃え上がらせて法案を灰にするよう、ともに声を上げようではないか。

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