天皇大権を蔑ろにする「元号の事前公表」黒幕は誰か。

天皇大権を蔑ろにする「元号の事前公表」黒幕は誰か。
倉山満(憲政史家)    2019.01.17
 
 安倍晋三首相は今年4月1日に新元号を公表する意向を明らかにしたが、元号を御世代わりの前に公表したい勢力があるようだ。
 
その勢力の筆頭として、報道されるたびに名前が挙がるのが杉田和博官房事務副長官だ。
 
 官房事務副長官とは、各官庁の調整を行う職だ。
 
杉田副長官は警察庁出身で、内閣人事局長も兼ねる。
 
霞が関に睨(にら)みを利かせ、「安倍一強」「官邸主導」の立役者として政官界では知られる。
 
 だが、あえて言おう。
杉田副長官とて、黒幕の走狗(そうく)にすぎない。
 
黒幕を叩かずして、走狗を攻撃しても意味がない。
 
 その黒幕が誰かはさておき、そもそも元号の事前公表とは、どういう問題なのか。
 
明治維新に際して一世一元の制が定められ、皇室典範で成文法化された(旧典範第12条)。
 
だが、敗戦の際に旧典範は廃止され、その後は慣習法が元号の法的根拠となった。
 
 やがて学界と言論界を中心に元号廃止運動が盛り上がり、対抗する形で保守陣営が元号法制化運動を進め、法制化された。
 
成文法でも根拠を持った形になる。
 
現行の元号法は2条しかない、短い法律だ。
 

【元号法】
第一条 元号は、政令で定める。
第二条 元号は、皇位の継承があつた場合に限り改める。
【附 則】
第一項 この法律は、公布の日から施行する。
第二項 昭和の元号は、本則第一項の規定に基づき定められたものとする。

 
 最初の元号である「大化」以来、元号が事前に公表された先例はない。
 
皇室を論じる場合に最も大事なのは、先例である。
 
皇室において、新儀は不吉である。
 
新儀はやむ得ない場合に行うものであり、自ら行うものではない。
 
 そうした日本国憲法どころか帝国憲法よりも以前から存在する皇室の慣習法を知らずとも、現行元号法のどこをどう読めば、元号を事前公表できるのか。
 
 昭和から平成への御世代わりを思い出してみよ。
 
1年間、昭和天皇のご病状は悪く、政府は「その日」に備えて新たな元号を用意していた。
 
しかし、昭和64年1月7日の崩御まで公表は差し控えられた。
 
同日、当時の小渕恵三官房長官が「平成」の元号を公表したのを昨日のごとく思い出す方も多いだろう。
 
システム上の問題など、特になかった。
 
 当時の竹下登内閣は、日本人としての道理を知っていた。
 
竹下登と言えば中国に日本を売り飛ばした極悪人であり、闇将軍として次々と傀儡(かいらい)の総理大臣を挿げ替え平成の最初の10年を汚してくれた大悪党である。
 
その竹下ですら、元号の事前公表などという暴挙は行わなかった。
 
その暴挙を、保守を自任する安倍内閣が行おうとしている。
 
 一世一元の制においては、元号は新帝の贈り名となる。
 
だから、新帝の名で公表されるのだ。
 
現行憲法では使われない用語だが、改元は天皇の大権なのである。
 
一世一元の制において新帝践祚(せんそ)に際してのみ元号が公表されることにより、現行憲法改元大権は健在なのである。
 
元号法第2条こそ、改元大権の規定なのだ。
全国障害者スポーツ大会の開会式に出席された皇太子さま=2018年10月、福井市
全国障害者スポーツ大会の開会式に出席された皇太子さま=2018年10月、福井市
 
 どうしても事前公表したいのなら、元号法を改めるなり、一世一元の制をやめるなりすればよい。
 
正当な手続きである、新規立法により行うべきだ。
 
 わが国の国体とは、皇室と国民の絆である。
 
その国民による選挙で選ばれた国会議員が法律を変えたいと言い出した時、止める方法はない。
 
仮に元号の事前公表のために元号法を変えるなら、一世一元の制を廃することとなる。
 

一世一元の制など150年の伝統しかないのだから、それ以前の先例に従い、天皇崩御に際して贈り名を熟議すればよい。

 

結果として新帝の贈り名が先帝の御世に公表された元号であっても、この方法なら天皇の改元大権を傷つけない。

今回で言えば、平成の間に元号を公表し、その元号が新帝の贈り名となっても、たまたま新帝が改元をしなかったというだけの話になるので。

 
 今上陛下の御譲位が決まってから、1年もあった。
 
新規立法の時間など、十二分にあった。
 
政府が新元号を早めに公表したいのなら、国会に元号法の改正案を提出すればよかったのだ。
 
ところが、何を今さら?安倍内閣は解釈により「事前公表は可能」との立場を採る。
 
 なぜ、国会による立法ではなく、政府による解釈で乗り切ろうとするのか。
 
これは安倍内閣の不手際のように見えるが、違う。
 
陰謀である。
 
改元大権を干犯しようとする黒幕の。
 
 この場合の政府とは、安倍晋三でも杉田和博でもない。
 
法律の解釈権を握る者だ。
 
ここまで書けば、賢明なる読者諸氏には黒幕が誰か明らかだろう。
 
 内閣法制局長官、横畠裕介である。
 
 内閣法制局とは、憲法を頂点とする日本国の法令のすべてに対する解釈権を持つ。
 
政府が国会に提出する法律は、法制局の審査(つまり許可)がなければ、閣議決定されない。
 
今の日本国に、法制局の見解に逆らえる政治家と官僚は、一人もいない。
 
その法制局は「天皇ロボット説」に固執し続けている。
 
今上陛下の譲位に際しても徹底的に抗い続け、「天皇の意思による譲位はさせない」との立場を貫いた。
衆院憲法審査会の参考人発言に対する政府見解について説明に臨む横畠裕介内閣法制局長官(手前)=2015年6月、国会内(酒巻俊介撮影)
衆院憲法審査会の参考人発言に対する政府見解について説明に臨む
横畠裕介内閣法制局長官(手前)=2015年6月、国会内(酒巻俊介撮影)
 
 今回、法解釈による元号の事前変更を安倍内閣にさせようとしている。
 
安倍内閣の意思だけで、そんな大それたことができるわけがない。
 
法制局の見解がお墨付きを与えていないはずがない。
 
もしかしたら、安倍内閣の閣僚は、誰も事の重大性を分かっていないのではないか。
 
改元大権を干犯しようとしていること、大化以来の先例を蹂躙(じゅうりん)しようとしていることの重大性を。
 
 立法ではなく法解釈により改元前に事前公表すると、天皇の元号ではなく、政府の元号となる。
 
新たな元号の下で、皇室も、政治家も、政治家を選んだ国民も、法制局の権威の下で生きていくということだ。
 
 安倍内閣に申し上げたい。今からでも遅くはない。
 
元号の事前公表など、はっきりやらないと宣言すべきだ。
 
 確かに元号は常に時の権力者に左右されてきた。
 
その意味で、改元大権は最も蔑(ないがし)ろにされた天皇大権の一つである。
 
それでも、皇室は今まで生き残ってきた。
 
だから、今回も改元大権が蔑ろにされたところで、天皇にも皇室にも傷はつかない。
 
 しかし、これだけは言っておく。
 
蔑ろにした者は、逆賊だ。(文中一部敬称略)
 
 
「コメント」
 
安倍首相が保守なら、横畠裕介内閣法制局長官を更迭すればよい。
 
安倍首相は、長州出身でしかも、岸信介首相の孫である。
 
長州藩は、尊王攘夷を唱えた藩でもある。
 
しかも、維新の英雄、高杉晋作の一字をもらっている。
 
しかし、7年間の安倍内閣の業績は、アベノミクスの失敗で再デフレになっている。
 
また、グローバル政策によって日本の国土、食料、や水その他の財産を国際企業に売り渡す政策を法制化して来た国賊である。
 
さらに外国人を大量に受け入れる移民法の改正を行った。
 
4月から主に中国人を中心とした34万人が入国してくる。
 
我が国にとって未曾有の危機的状況である。
 
日本の草の根保守は、参院議員選挙で自民党には投票しない。
 
ナショナル新党の登場に期待している。
 
 

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