幹部は出身国に忠誠も・・・”卒業論”麻生財務相に背を向ける中尾ADB総裁

幹部は出身国に忠誠も・・・”卒業論”麻生財務相に背を向ける中尾ADB総裁

2019.5.10

 かなり前のことだが、フィリピン・マニラで開かれたアジア開発銀行(ADB)総会に合わせた中国の大手銀行主催のパーティーで同行幹部と会話していた。

 突然会場が緊張に包まれた。

幹部も血相を変えて、一目散に会場入り口に駆けていった。

他の中国金融関係者たちも我先に、である。

とある中国共産党の長老夫人がお出ましになったのだ。

それだけの理由で、パーティーの賓客そっちのけとは、と噴飯ものだが、中国金融とは何事も党内の実力者の序列次第で決まるのだ。

 それが軍隊式のビジネス・スタイルである。

融資先が格下だと見ると、命令口調で勝手な条件を押し付ける。

反対に相手から融資を引き出そうとすると、徹底的に平身低頭、相手にへりくだり、接待攻勢をかける。

 日本のエリートたちは中国式にからきし弱い。

側聞するところ、いとも簡単に中国にとりこまれるのは日本の国際派財務官僚のようだ。

と、思っていたら、財務省はADBによる対中融資の事実上の打ち切りに動き始めた。

麻生太郎財務相と浅川雅嗣財務官のコンビで中国に対して、ADB融資先国からの「卒業」を促すというのだ。

 実は、本欄では5年前から、ADBの対中融資に異議をはさんできた。

習近平政権が当時、中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)設立に向け走り出したのだが、業態はADBと重なる。

アジアのインフラ資金需要に対応するためというのが正当化の口実だが、インフラ資金が足りないというなら、ADBは最大の貸し手である中国への新規融資を打ち切って、貸した分の早期全額返済させ、それを中国以外のインフラ資金需要に充当するのがスジというものだ。

ちょうど、帰京中の中尾武彦ADB総裁に、その旨をぶつけ、AIIBと一線を画すべきだと申し上げたが、中尾氏は「借り手の銀行が貸し手先に融資しても構わない」と言い、AIIBへの積極協力姿勢をあからさまにする。 

中尾氏は前任の黒田東彦(はるひこ)氏(現日銀総裁)と同様、財務官上がりである。

黒田総裁時代、ADBはメコン川流域開発プロジェクトへの中国資本進出を容認し、環境破壊を横行させたとの批判は根強い。

 中尾氏も黒田氏に劣らぬ中国びいきだ。

AIIBに対し、ADBとの協調融資を積極的に受け入れるなど、盛んに助け舟を提供している。

対中融資は新規額こそインドに次ぐが大口で、残高ベースでは最大のままだ(グラフ参照)。

 浅川財務官は中国に対して距離を置いている。

浅川氏への信頼の厚い麻生財務相は中国の「一帯一路」での融資のやり方を「サラ金並み」とズバッと切って捨てるようになったのが昨年のことだ。

この5月初旬に開かれたADB総会で麻生氏は中国のADB卒業論をぶち上げた。

 ところが、中尾総裁は麻生氏や浅川氏に従う気配はなく、対中融資継続を公言してやまない。

ADBは建前上、独立機関だが、幹部は出身国の意志を代表する。

中国代表のADB理事は党に忠誠を尽くす。日本はどうなっているのかね。

(産経新聞特別記者・田村秀男)

 

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