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Media Watch: 吉田調書誤報事件~ 門田隆将『新聞という病』から

「朝日は、なぜ事実をねじ曲げてまで、日本を貶めたいのか」
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■1.日本人を貶めた朝日新聞の「吉田調書」誤報

 ノンフィックション作家の門田隆将氏の新著『新聞という病』[1]が面白い。

門田氏は綿密な調査に基づいたノンフィクションに定評があり、弊誌でも何度も登場いただいている。

その徹底した事実調査から、昨今の取材力を失った「新聞という病」を論じているのだから、破壊力は凄まじい。

その極めつけが朝日新聞の「吉田調書」誤報事件である。

 これは朝日新聞が平成26(2014)年5月20日から始めた一大キャンペーンで、東日本大震災直後の平成23(2011)年3月15日朝、福島第一原発の東電職員の9割が「所長命令に違反」して、「原発から撤退」していた、すなわち「命令に背いて」逃げていた、と報じたのである。

 しかも、政府事故調査・検証委員会による福島第一原発所長・吉田昌郎氏の聴取記録、いわゆる「吉田調書」によって、そのことが明らかになったという。

 朝日記事を受けて、『ニューヨークタイムズ』は「2011年、命令にも関わらず、パニックに陥った作業員たちは福島原発から逃げ去っていた」、英国のBBCも「朝日新聞は、福島原発の労働者の約90%がメルトダウンの危機が目前に迫った状況で逃げた」と報じた。

東日本大震災での秩序ある行動で世界を驚かせた日本人の評価を、朝日はこのキャンペーンで一気に貶めたのである。

 ここで立ち上がったのが、吉田所長はじめ100名近い関係者とのインタビューをもとに『死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日』[a]を上梓していた門田氏だった。

 氏は様々な週刊誌、月刊誌などで朝日の記事が誤報であることを訴え続け、ついには朝日の木村伊量社長の謝罪会見と引責辞任に追い込んだ。

その間、朝日から「法的措置も辞さない」との強硬な抗議書を何度も受け取りながらも。

 この事件で、朝日がいかに作為的にフェイク・ニュースを作り出すのか、という体質が満天下に知れ渡った。

その意味で、戦後のマスコミ史でも特筆すべき事件だった。

今回の『新聞という病』は、直接の当事者である門田氏自身によって、その過程が詳細に描かれていて、朝日の「病」を白日のもとに曝け出している。

 同書はほかにも多くの興味深いトピックスを取り上げているが、今回は「吉田調書」のみを取り上げて、朝日の「病」を精しく見てみたい。

■2.「部下たちが朝日の報道によって、”逃げた”ことになりました」

 朝日の平成26(2014)年5月20日付け一面記事は、「所長命令に違反、原発撤退 福島第一、所員の9割 政府事故調の『吉田調書』入手」と題して、次のように始まる。

__________
 東京電力福島第一原発所長で事故対応の責任者だった吉田昌郎(まさお)氏(2013年死去)が、政府事故調査・検証委員会の調べに答えた「聴取結果書」(吉田調書=キーワード)を朝日新聞は入手した。

それによると、東日本大震災4日後の11年3月15日朝、第一原発にいた所員の9割にあたる約650人が吉田氏の待機命令に違反し、10キロ南の福島第二原発へ撤退していた。

その後、放射線量は急上昇しており、事故対応が不十分になった可能性がある。

東電はこの命令違反による現場離脱を3年以上伏せてきた。[2]
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 記事は、さらに「全資料、公表すべきだ」との見出しまでつけて、さも政府ぐるみで隠蔽を図ってきたかのような紙面作りをしている

 事実はこうだった。

第一原発(1F)2号機が最悪の危機に陥った3月15日午前6時半頃、吉田所長は「各班は、最少人数を残して退避!」と命じた。

これに従って、女性を含め600名を超える職員が一斉に第2原発(2F)に退避した。

一糸乱れぬ動きだった。

すでに前夜から、2Fの増田尚弘所長との間で調整が済んでおり、「退避」とは「2Fへの退避」であることは明らかだった。

 危険な第一原発に残って、後に「フクシマ・フィフティ(福島の50人の英雄)」[b]として海外でも称賛された班長は、門田氏にこう語っている。

__________
 俺も残ります、と部下に言われ、?俺が倒れた時はどうするんだ。

頼むから2Fに行ってくれ?と命じました。

あの時、うちの班は二十人近くいましたが、私を含めて三人を残して、すべて2Fに移ってもらいました。

2Fに行った部下たちが朝日の報道によって、?逃げた?ことになりました。

申し訳ない思いで一杯です。[1, 1165]
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

■3.朝日の法的措置をちらつかせる抗議書

「朝日新聞の報道は誤報である」と門田氏が最初にブログで発信したのは、平成26(2014)年5月末のことだった。

その記事は大きな反響を呼び、様々な所に転載された。

そして、『週刊ポスト』の6月9日発売の号に、「朝日新聞『吉田調書』スクープは従軍慰安婦虚報と同じだ」と題した6ページの記事を書いた

一般のメディアが「誤報」と指摘したのは、これが最初だった。

 発売と同時に朝日から激しい反発が来た。

「朝日新聞社の名誉と信用を著しく毀損しており、到底看過できない」

「週刊ポスト誌上での訂正と謝罪の記事の掲載を求める。誠実な対応をとらない場合は、法的措置をとることを検討する」という強硬な抗議書を送りつけてきた。

門田氏のインタビュー記事を載せた『フラッシュ』にも同様の抗議書が来た。

__________
 自らは現場で命をかけて奮闘した人々の「名誉と信用」を傷つけたことを恬(てん)として恥じず、それに批判の論評を掲げたジャーナリストに対しては、法的措置をちらつかせる抗議書を送りつける

私は、朝日新聞が持つ?言論封殺?と、?独善的体質?に対して、いうべき言葉を失った。[1, 2066]
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 それでも門田氏は戦いを続けた。月刊誌でも対談を行い、論評記事を掲載した。

■4.「朝日の悪質さにあらためて驚愕」

 8月に入って事態は急展開した。

産経新聞が、吉田調書の全文を入手し、門田氏はそれを読んだ上で「朝日は事実を曲げてまで日本人をおとしめたいのか」という論評を八月十八日付産経紙面に寄稿した。

これにも朝日は間髪を容れず、抗議書を送りつけてきた。

 門田氏は調書を読んでの感想を、次のように記している。

__________
 私は二日間、徹夜でこれを読んだが、朝日の悪質さにあらためて驚愕した。

 その中には、部下が命令違反で「撤退」したどころか、部下の勇気を讃え、さらにはバスを用意して2Fに向かわせたことが繰り返し出ていたからだ。

「関係ない人間は退避させますからということを言っただけです」

「2Fまで退避させようとバスを手配したんです」

「バスで退避させました。2Fの方に」

 そんな吉田証言が次々と出てくる。

そして、「部下の命令違反」などの証言はどこにもなく、逆に吉田所長は、調書の中で部下たちをこう讃えていた。

「本当に感動したのは、みんな現場に行こうとするわけです」

 命を落とすかもしれない現場にそれでも行こうとする部下たちとの絆の強さを感じさせる証言が、調書のあちこちに存在していたのだ。[1, 2127]
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 調書をそのまま読めば、「所長命令に違反して、所員の9割が逃げた」などという事は誤報、というより作為的な虚報である事がすぐに判る。

読売新聞、共同通信と、他のメディアも次々と吉田調書の全文を入手し、朝日の誤報を論じ始めた。

■5.調書公開で、即日謝罪

 9月11日に吉田調書が政府によって正式に公開されると、朝日は突然、木村伊量社長の謝罪会見を開いた。

その翌日、門田氏は朝日の広報部長から「抗議の前提となっていた記事を取り消しましたので、抗議したこと自体が誤っておりました。

二つの抗議書をいずれも撤回し、心よりお詫び申し上げます」との電話を受け取った。

翌日には文書で謝罪文も届いた。

 吉田調書が公式公開されると即座に誤報と認め謝罪するとは、誰が見ても誤報と判るからだろう。

逆に言えば、朝日は調書が公式公開されない限り、言い逃れできるかも、と思っていたのか。

 吉田所長は、混乱の中で記憶違いなどがあってはならないと、調書の公開を望まなかったので、政府は非公開の立場をとっていたが、その方針を転換した理由について、菅官房長官は次のように説明した。

__________
 断片的に取り上げられた記事が複数の新聞に掲載され、一人歩きするというご本人の懸念が顕在化しており、このまま非公開となることでかえってご本人の遺志に反する結果になると考えた。[3]
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 部下を貶めた朝日の虚報には故・吉田所長も草場の陰で無念の涙を流していたろう。

政府としても、調書公開によって、朝日の虚報にとどめを刺そうと考えたのかも知れない。

■6.「朝日は、なぜ事実をねじ曲げてまで、日本を貶めたいのか

 いずれにせよ朝日の悪質な虚報は、門田氏の奮闘で真実が明らかになった。

その上で門田氏は読者に根本的な疑問を提示する。

朝日は、なぜ事実をねじ曲げてまで、日本を貶めたいのか」と。

の疑問に門田氏自身はこう答える。

__________
 朝日には友人も多いので、私はたまに彼らと議論することがある。 

その時に気づくのは、彼らに「自分たちが日本を貶めている」という意識は全くないことだ。・・・

 私が問うと、彼れらはだいたいこう答えることが多い。

「朝日新聞はリベラルであり、権力と対峙し、これを監視している。その使命を負っているのが朝日新聞だ」

 いつもその答えに私は苦笑する。そして、こう言う。

「朝日がリベラル? 単なる?反日?だよ」と。

私が驚くのは、彼らには、日本を貶めている意識はなく、むしろ国家権力に対して厳しい記事を書いていると思い込んでいる点だ。[1, 2186]
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 もちろん、こういう記者も多いだろう。

しかし、「権力と対峙し、これを監視している」意識だけで、こんな作為的虚報まで創作するだろうか。

 この記事は、吉田調書を読めばすぐに嘘とバレる内容であり、しかもバレたら朝日全体の信用を地に落とす事が明らかな嘘をあえて書いている。

普通の日本人には、こんな「度胸」はない。

この記事の背景には何か、日本人には想像もできない、異様な、強烈な悪意を感じてしまうのだ。

■7.「福島の英雄」とセウォル号の船長たち

 ここで思い浮かぶのは、朝日がこの一大虚報キャンペーンを始めた一ヶ月ほど前に、韓国でセウォル号沈没事故が起きていることだ。

波高わずか1メートルの静かな海面で、暗礁もなく、視界も良好の中で、突然、転覆・沈没して、300名以上の死者を出した大惨事である。

事故の原因としては、船が無理に増・改築され、過剰積載された上で、新人船員の操船ミスがあったとされている。

 そして、何よりも国際社会を唖然とさせたのは、船長以下、操船関係者全員が乗客を船内に置き去りにしたまま、我先にと脱出してしまった事だ。

「福島の英雄」たちが我が身の危険を顧みずに立ち上がって国際的な称賛を浴びたことに比べれば、韓国を愛する人々にとっては、耐えがたい屈辱だったろう。

 実は、木村伊量社長は、平成17(2005)年の東京本社編集局長時代に田中康夫・長野県知事(当時)らの新党結成問題に関して、ある記者が取材せずに記事を捏造した事件で、金本裕司・長野総局長と共に減給・更迭処分を受けている。

この時のテレビニュース画面で、「減給・更迭 朴伊量 東京本社編集局長 金裕司 長野総局長」という報道がなされた。

 記事捏造事件で処分を受けた人間が、その後、社長になる、というのは、日本社会の常識から見て想像を絶するが、朝日の社内はそこまで精神的外国人が実権を握っているのだろうか。

■8.「和」を破壊する「嘘」を許してはならない

 中国大陸や朝鮮半島には「誣告(ぶこく)」という社会伝統があるそうな。

「虚偽の事実で相手を貶(おとし)める」という事で、韓国で偽証罪が多いのは、この誣告の伝統の現れと考えられている

韓国で2010年に偽証罪で起訴された人は日本の66倍、日本の人口が韓国より2.5倍多いことを勘案すれば165倍に達する

これはもはや文化の違いとしか言いようがない。[c]

「従軍慰安婦」問題は、まさしく「誣告」の伝統が国際的に繰り広げられたものと言える。

そして、今回の「吉田調書」誤報事件も、「誣告」の伝統を継承した人々による仕業と考えると、通常の日本人には発想すらできない誤報事件がなぜ仕組まれたのか、得心がいく。

 この点については門田氏は一言も触れていない。

あくまで弊誌独自の感想である。

しかし、現代の新聞やテレビで、「誣告」などという前近代的な伝統を継承する輩(やから)が力を振るっているとすれば、それこそ事実の正確な報道という近代的自由民主主義の基盤が侵されてしまう。

まさに「新聞という病」を引き起こしている病原菌の一種かも知れない。

 報道界だけの問題ではない。

誣告に代表とする「嘘」は、日本人の理想とする共同体内の「和」を破壊する。

原発事故から日本を救ったのは、吉田所長以下の「命を落とすかもしれない現場にそれでも行こうとする部下たちとの絆の強さ」すなわち「和」の力であった。

その「和」を貶めようとしたのが、この虚報事件であった。

「和」こそは我が国の美しさであり、強さの源だ。

その「和」を「嘘」は破壊する。

「嘘」を許さない事が、国の姿を護る道である。
                                        (文責 伊勢雅臣)

■リンク■

a. JOG(807) 福島第一原発の大惨事を食い止めた男たち
 私はあの時、自分と一緒に「死んでくれる」人間の顔を思い浮かべていたんです。
http://blog.jog-net.jp/201307/article_5.html

b. JOG(724) 福島の英雄たち
 自衛隊、消防庁、警視庁などの無数の英雄たちが、身を呈して福島
第一原発事故の収拾にあたった。

http://blog.jog-net.jp/201111/article_3.html

c. JOG(815) 隣の国はモンスター!? ~ 『悪韓論』から
 データで明かされた韓国社会の異様な実態。
http://blog.jog-net.jp/201309/article_10.html

■参考■(お勧め度、★★★★:必読~★:専門家向け)
  →アドレスをクリックすると、本の紹介画面に飛びます。

1. 門田隆将『新聞という病』★★★、産経新聞出版、R01
http://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4819113674/japanontheg01-22/

2. 朝日新聞「所長命令に違反、原発撤退 福島第一、所員の9割 政府事故調の「吉田調書」」H260520(「この記事を取り消します」との表記あり)

3. 日本経済新聞、「吉田調書を公開 官房長官『非公開、遺志に反する』H260911

4. 朝日新聞「『虚偽のメモ』記者解雇 朝日新聞、総選挙で誤った記事 東京編集局長ら更迭」H170830

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