外国人労働者受け入れは誰の利益なのか? From 施 光恒(せ・てるひさ)@九州大学

■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■
 『三橋貴明の「新」経世済民新聞』

     2019/7/05

      外国人労働者受け入れは誰の利益なのか?

      From 施 光恒(せ・てるひさ)@九州大学
■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■

おっはようございまーす(^_^)/

参議院の選挙が近づいてきましたね。

争点はいろいろあるでしょうが、一つ、選挙を機会にじっくりと議論する必要があるのが、日本の事実上の移民国家化を招く恐れのある外国人労働者の大規模受け入れの是非についてです。

安倍政権は昨年末の改正入管法によって、外国人単純労働者を実際上、解禁してしまいました。

今回の参院選の争点として浮上するかどうかは疑わしいですが、きちんと議論しておかないといけない問題であることは間違いありません。

先日の産経新聞にも、この問題について大いに議論が必要だとして次のような記事が出ていました。

「【令和の争点】共に暮らす 外国人「1000万人」青写真は 宗教や価値観、厳然と残る「壁」」(『産経新聞』2019年7月1日付)
https://www.sankei.com/politics/news/190701/plt1907010036-n1.html

この記事では、40年後の日本では、国内の10人に一人が外国人になるかもしれないという予測、つまり1000万人の外国人が日本で暮らすようになるだろうという予測が紹介されています。

現在でも、東京都新宿区では、住民の約12%が外国人だそうです。

 
今年の一月には、新宿区の新成人の約半数(45%)が外国人だったと報道されていました。

しかし、移民問題で悩んでいる欧州諸国と比べると、まだたいした数値ではないのかもしれません。

例えば、2011年のイギリスの国勢調査によれば、ロンドンの住人のうち「白人のイギリス人」が占める割合は44.9%だったそうです。

 
また、ロンドンの33地区のうち23地区で白人は少数派となっていました(ダグラス・マレー/町田敦夫訳『西洋の自死』東洋経済新報社、2018年)。
 
これらは2011年の数値ですので、現在では、「白人のイギリス人」はさらに少数派になっているのではないでしょうか。

外国人労働者や移民を受け入れるか否かの議論で軽視されがちな事実として、

 
外国人労働者の受け入れは、受け入れ国のすべての人々に等しく利益、あるいは負の影響が及ぶというわけではなく、それが不均等に配分されてしまうということがあります。

つまり、外国人労働者の受け入れは、彼らを雇用する企業やその関係者(投資家など)には利益をもたらすが、一般労働者には不利益をもたらすことが多いのです。

米国の第一線の労働経済学者ジョージ・ボージャスが著した移民の政治経済学』(白水社、2018年)では、米国の経験を例に、その点について主に経済的観点からのみですが、論じられています。

少し長いですが、引用します(206~207頁)。

「移民が労働人口に加わることで、富は移民と競合する立場にある労働者から移民を使う側の経営者に移転される。

 
ただ、経営者が享受する利益は労働者が失う損失を上回るため、移民は「移民余剰」を生み出す。
 
つまり、受け入れ国の国民の全体の富は純増する。
 
ただ移民余剰は小さく、年間でおよそ五百憶ドル程度だ。
 
一方で同じ分析結果によると、五千億ドルの富が労働者から企業に移転する。(略)。」

「受け入れ国が福祉国家である場合、移民余剰となる利益は移民による社会保障サービスの利用に伴う損失で相殺される可能性がある。

 
移民が受け入れ国の国民よりもそうしたサービスを利用しがちであることはほぼ間違いないことで、移民は短期的には財政負担となる。
 
ただ長い目で見れば、移民は財政面でプラスの存在かもしれない。
 
(略)。移民は納税者となり、税負担を緩和するかもしれない。
 
ただ、多くは想定される将来の税収や政府支出の推移に左右されるため、移民がもたらす長期的な財政上の利益を想定することは極めて困難だ。」

「少なくとも短期的には、移民余剰による経済的な利益は移民に給付される社会保障サービスの財政負担により相殺されると言ってもおそらく暴論ではない。

 
過去数十年間に米国に移住してきた外国人の規模や技能水準を考えると、移民の経済的な影響は均せばせいぜい差し引きゼロだ。
 
ただその裏では、莫大な富が労働者から企業に移転している」。

「開国すれば移民が多大な経済的利益をもたらすと主張するのは、移民を人間ではなく単なる労働者と見ているからにすぎない。

 
開国支持者が主張する移民がもたらす数兆ドルに上る経済的利益は、移民が受け入れ国の社会的、政治的、経済的な側面に負の影響をもたらす場合、容易に相殺される(経済的な大損失にもなりうる)。
 
開国による影響は、移民が労働力や生産性のあるスキルを持ち込むかどうかだけではなく、貧しい自国の発展を阻害してきたかもしれない制度的、文化的、政治的な慣習を彼らが持ち込むかどうかにも左右される」

以上、長々と引用しましたが、結局、著者が述べているのは次のことでしょう。

移民が受け入れ国の経済にプラスの影響を与えることは長期的にはあるかもしれないが、それには不確定要因が多く、あまり明確ではない。

短期的には、移民はプラスどころか社会保障サービスの利用などで財政負担となる可能性が高い。

 
(経済的影響だけでなく、移民がもたらす社会的、政治的影響を考えれば、さらにマイナス要素が増す可能性がある)。

ただ、はっきりしているのは、移民受け入れは、莫大な富を労働者から企業に移転させるということです。

 
つまり、企業や投資家には、大いに有利であること、そして結果的に、企業経営者や投資家などの「勝ち組」(最近の言葉では「上級国民」でしょうか…)と、「一般国民」との格差をますます拡大させるのに寄与するということなのです。

外国人労働者や移民の受け入れの是非を議論する際、「一部の企業関係者や投資家には非常に有利で、一般国民にとってはマイナス面が大きい」

 
莫大な富を労働者から企業関係者や投資家に移転させる効果を持つため、格差拡大に拍車をかけ、国民の分断を招く恐れがある」という点は、押さえておく必要があると思います。

ところで、外国人労働者・移民受け入れ問題について、『三田評論』という慶應義塾が出版する雑誌の企画した座談会に、先日、出席しました。

上記の点などについても触れておりますので、よろしければご覧になってください。ネット上でも読むことができます。

【特集:「移民社会」をどう捉えるか】「座談会: 移民社会化から考える これからの日本」(『三田評論』2019年7月号)
https://www.mita-hyoron.keio.ac.jp/features/2019/07-1.html

長々と失礼しますた…
<(_ _)>

コメントを残す

サブコンテンツ

FC2ブログランキング

政治・経済ー政治

ブログの殿堂

ブログランキング

i2iアクセス解析

国税

my日本

i2iサイト内ランキング



合計累計カウンター


今日の合計


このページの先頭へ