MMTの服用を拒否する〇〇病患者を診断する(その1): From 小浜逸郎@評論家/国士舘大学客員教授

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 『三橋貴明の「新」経世済民新聞』

     2019/08/13

MMTの服用を拒否する〇〇病患者を診断する(その1)

From 小浜逸郎@評論家/国士舘大学客員教授

 

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ステファニー・ケルトン教授が来日してから、一か月近くが経ちました。
 
その間、日本の経済学者、エコノミストなどの発言がいくつも出ましたが、わずかな例外を除いて、大部分がMMTについての無理解と、日本経済の現状に対する無知をさらすものでした。
 
筆者は経済学なるものを正式に学んだことはありませんが、その素人の目にも、これはほとんど病気だとしか思えないような発言が目立ちます。
 
MMTがどうのという前に、この人たちは、専門家面をしていながら、経済の基本がわかっていません。
 
それらしき専門用語を使っていながら、人を煙に巻くだけではなく、頭が病理的な段階に入っていて、自分でも何を言っているのかわかっていないのではないでしょうか
 
こういうひどい「経済言説」がはびこっている日本の現状を深く憂慮します。
 
せっかくケルトン教授に来てもらった以上、こうした頭のおかしい言説群を少しでも吹き払うのでなければ、彼女に申し訳が立ちません。
 
「やっぱり日本て、ダメね」と思われて悔しく、また恥ずかしくないでしょうか。

そこで、ここでは、これらの《症例》を発表順にいくつか挙げて、それに対して厳しい診断を下すことにします。

【症例1】MMTを実践すれば、インフレを止められず国債が紙切れ同然になって、財政が立ちいかなくなる可能性は否定しきれない。

 
(中略)安倍政権では首相の意に沿う日銀総裁やリフレ派の審議委員が任命され、日銀が事実上の財政ファイナンスに踏み出し、消費増税も2度先送りされてきた。
 
いざという時に、果敢に利上げや増税ができるのかは疑わしい。
 
財政主導の経済で生産性が落ち、中長期には日本経済の成長力が落ちる恐れはある。
 
(ダイヤモンド編集部・西井泰之 ダイヤモンドオンライン 2019/7/17)

【診断】MMTでは、財政赤字はそれ自体悪ではなく、財政出動が行きすぎないようにする歯止めはインフレ率であると何度も断っています。

 
それをコントロールすることが政府日銀の役割であり、それには増税だけではなく、さまざまな方法が考えられるとされています。
 
どういう実体経済の現場から高インフレの兆候が出てきているのかをまず具体的に精査することが必要だと、ケルトン教授は記者会見で答えていました。
 
あなたはそれを聞かないで書いているようですね。
 
それに、消費増税の実施こそは、デフレの長期化を作り出してきたということがまるで分っていません。
 
これまでの増税の延期がなぜ、高インフレ期になった時の増税を困難にする根拠になるのでしょうか。
 
また、財政主導の経済でどうして生産性が落ちるのですか。
逆でしょう?
 
政府がさまざまな公共部門に投資することによって、技術開発も進み、企業も活気を呈し、生産性があがるのではないですか。
 
前後で論理がまるで通っていませんね。
 
あなたは、おそらく日経新聞読みによくある「表層型ADHD」に罹患しています。

【症例2】平時における財政赤字には、金利上昇やインフレにつながるリスクがないだろうか? 

 
MMTは「心配ご無用」という。
 
自国通貨建てで国債を発行する政府は、これをいつでも自国通貨に換えることができるからである。
 
中略)MMTにおける中央銀行はこうした目標(物価上昇率2%)も出口(金融緩和の終わり)もない。
 
政府の出す財政赤字をひたすら埋める役割を担うにすぎない。
 
中央銀行が国債を引き受けるなら、財政赤字はそのまま貨幣の増発になる。
 
いずれインフレを誘発しないのだろうか?
 
しかし、MMTによれば、貨幣が増え過ぎても、その価値が毀損することはない。

逆説的だが、MMTによれば、政府が財政収支を気にしなくてよいのは、その気になればいつでも増税できるからだ。

MMTは高い成長を見込んでいるわけではない。

 
自然増収ではなく増税なしには貨幣を回収できない。

MMTは課税を貨幣(タンス預金)の回収とみなすが、回収の仕方に配慮がないようだ。

 
仮に消費税や所得税でもって課税するなら、景気や成長に与える影響は甚大だろう。
 
(中略)MMTは政府に無限の課税権を認めているようにも思われる。

MMTが目指すのは脱デフレではなく、政府が主導する(慢性的な需要不足を埋め合わせる)経済の再構築、いわば「大きな政府」だ。

 
金融政策を補完する(助ける)ための財政政策でもない。
 
MMTでは金融政策は財政政策(赤字)の帳尻合わせに使われている。
 
(一橋大学経済学研究科・政策大学院教授・佐藤主光 プレジデントオンライン 2019/7/19)

【診断】あなたはかなりの重症に侵されています。

 
少し時間をかけて診察しましょう。
 
まずあなたは、MMTを実施する政府による歯止めのない財政出動が、中銀を奴隷化することを心配されているようですが、政府と中銀はもともと統合政府です。
 
しかし財政政策と金融政策という役割分担はおのずとあって、このことはMMTでも何ら変わりありません。
 
MMTはデフレ脱却ができない時には、お金を積み上げるだけの金融政策のみに偏したこれまでの政策を、もう少し実体経済を直接活性化させる財政政策主導に切り替えるべきだと主張しているにすぎません。
 
高インフレをコントロールするのは、統合政府が二人三脚で行えばよいのです。
 
つぎに、「MMTによれば、貨幣が増え過ぎても、その価値が毀損することはない」とありますが、そんなことは、MMTは一言も言っていません。
 
インフレが行き過ぎれば貨幣価値が毀損するのは当然のことで、MMTは、財政赤字の制約をまさにそこに置き、そのためのプランをいくつも提示しています。
 
つぎに、MMTは、デフレからの脱却や高インフレの抑制のために、政府と民間との経済的関係の事実を解き明かしているだけであって、資本主義であるかぎり、成長(国民が豊かになること)のためのヒントを提供しているのは当然です。
 
仮にMMTが高成長を望んでいるとあからさまに言明していなくても、経済成長が実現するような政策を政府がとるなら、税の自然増収が期待できますから、増税をあえて強制する必要はなくなるでしょう。
 
あなたは、いったいに、税の話ばかりしていますが、消費増税を強制してきたのはMMTではなく、政府財務省ですよ。
 
「消費税や所得税でもって課税するなら、景気や成長に与える影響は甚大だ」と言っているところを見ると、消費増税には反対らしい。
 
それなら、政府を責めるべきであって、なんで現代の貨幣や国債のしくみと回り方(「政府の赤字は民間の黒字」)を解明しているだけの「理論」に、増税の責任を押し付けるのでしょう。
 
MMTは「無限の課税権を認める」などと言ったことは一度もありません。
 
むしろ逆に、税とは政府の歳出の唯一の財源(であるべき)だという、誰もが陥っている考え方がそもそも間違いだという本質規定をしているのです。
 
ケルトン教授は、財政赤字をそんなに気にする必要はないということを説明するために、次のように言いました。
 
「政府の債務残高(例の1200兆円云々)は、過去に政府が財政支出を税金で取り戻さなかったものの履歴でしかなく、それは民間の貯蓄になっている」
 
これは、裏を返せば、まさに税の機能が政府の歳出のためにあるのではなく、別のところにあることを示唆していることになります。
 
そういうわけで、あなたは、反論のピントがまるでずれているのです。
 
さらに、たしかにMMTは脱デフレを「目指して」はいませんが、現在の日本のようにデフレがこれほど続いている時に、政府が取るべき政策の間違いについては指摘しています。
 
MMTは、脱デフレのためには、金融政策偏重よりも積極的な財政政策にシフトした方がよいというヒントを与えているからです。
 
ところでその場合、「大きな政府」(曖昧な言葉ですが)と脱デフレとは何が違うのでしょうか。
 
20年以上続くデフレで国民が苦しんでいる時に、「慢性的な需要不足を埋め合わせる」ために一時的に政府が「大きな政府」を演じることは悪いことでしょうか?
 
しかし、そもそもMMTは、「小さな政府」か「大きな政府」のどちらがよいかなどというイデオロギーの選択を迫るような「政治思想」ではありません。
 
民間の景気がよい時には、政府の役割は小さくて済みますから、その時には「小さな政府」がよいと言ってもあながち間違いではないでしょう。
 
これはMMTの一環であるJGP(雇用保障プログラム)のアイデアを見ればよくわかります。
 
繰り返しますが、MMTは国民が豊かになるためには、どういう考え方をしたらよいかを示す「理論」です。
 
最後に、「MMTでは金融政策は財政政策(赤字)の帳尻合わせに使われている」とはいったい何のことでしょう。
 
意味不明ですね。
 
大規模な財政出動をした時に、高インフレが生じ、その尻拭いを日銀がする羽目に陥るという意味でしょうか。
 
しかし日銀ばかりでなく、政府が赤字財政を少し抑えることはいくらでもできますよね。
 
それにしても、まだMMTはどこでも「使われてい」ませんよ。
 
あなたは、まだ実施されてもいない「理論」を、すでに実施されている「政策」と勘違いして、それが招く高インフレとその結果として政府に「無限の課税」を許す事態に、極度におびえているようですから、「藁人形恐怖症」です。

【症例3】今仮に、日本政府がMMTの採用を真剣に検討しているというニュースが流れたとすると、私が真っ先にすることは、円建ての銀行預金をドルかユーロ建ての預金に預け替えることだ。

 
(中略)MMTによれば、政府の財政需要をまかなうために、日銀は輪転機を回して、円の紙幣をどんどん刷り、それで国債を買うわけだから、円は供給過剰となって価値が下がるに決まっている。
 
これは私だけでなくヘッジファンドなど世界中の投機家も円安を見越して円売りドル買いをするだろうから、ニュースが流れた1時間後には1ドル=300円まで円安となっているかもしれない。
 
(中略)紙幣の価値が、中央銀行が持つ銀や金で裏打ちされている時代と違い、現在はどの国も国の信用(徴税力)だけが裏付けとなっている。
 
MMTを実施すると言った瞬間に、この信用が根底から揺るがされるのだ。
 
(中略)MMTのようにこれから不換紙幣をどんどん刷りますと宣言するのは、フーテンの寅さんではないが「それを言っちゃあ、おしまいよ」ではなかろうか。
 
(元財務省大臣官房審議官・有地浩 アゴラ 2019/7/21)

【診断】あなたについては、前回のメルマガでも取り上げたのですが、あまりに無知なので、もう一度診察室に来てもらいました。

 
あなたは、MMTについてだけではなく、お金についての知識もまるで持ち合わせていません。
 
MMTでは、自国通貨建ての国債発行額には、インフレ率以外に制約はないと言っているので、財政出動の際に、どれくらいのインフレを許容するのかということは、大前提としてあらかじめ繰り込まれています。
 
したがって、「ニュースが流れた1時間後には1ドル=300円まで円安となっているかもしれない」などというのは根も葉もない妄想です。
 
次に、「日銀は輪転機を回して、円の紙幣をどんどん刷り、それで国債を買う」などといっていますが、財務省出身のくせに、日銀が国債を買う(貸す)際に紙幣など刷らないということを知らないのでしょうか。
 
この人は、お金というものを紙幣でしかイメージしていないのですね。
 
事実は言うまでもなく、政府が国債を発行するに際しては、ただ日銀当座預金の簿記の借方欄に10兆円と記載されるだけです
 
現金紙幣なんて、そんなに動いていないのですよ。
 
私たちは、日常生活で現金紙幣を用いていますから、「お金」と聞くとすぐに現金紙幣を思い浮かべてしまいますが、日銀当座預金に書き込まれた数字も、政府小切手も、企業・組織の預金通帳に書き込まれた数字も、すべて「お金=借用証書」なのです。
 
この証書の流通を成立させているのは、人と人との信用関係であって、金銀や現金紙幣のような「モノ」ではありません。
 
通貨とは、不換紙幣だけではありません。
 
それはごく一部であって、日銀当座預金や銀行預金に書き込まれた数字(万年筆マネー)も、カードで買い物をして記録された数字も、政府小切手もみな一種の通貨です。
 
 
MMTが財政出動を促す場合にもこのことは変わりありませんから、「信用が根底から揺るがされる」などということは、200%あり得ません。
 
あなたは、財務省時代、大臣官房審議官という職に就いていていったい大臣に何を進言したのでしょう。
 
あなたのような無知な人が、政治家にもっともらしく何か吹き込んだとすれば、それが今日の政治家たちの緊縮脳の育成に一役買っているかもしれません。
 
あなたは、重度の「インフレ被害妄想狂」です。
(次号に続く)

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