新米大臣の空?な話法: 『表現者クライテリオン』

新米大臣の空虚な話法: 『表現者クライテリオン』川端祐一郎

九月に改造後の安倍内閣が発足したが、その人事上の目玉として注目を集めたのは、戦後三番目に若い大臣であるという小泉進次郎環境相であった。

内閣改造の直前に行われた新聞社の世論調査でも、「次の首相にふさわしいのは誰か」と訊けば進次郎氏がそのトップに推されていたのだから、政権の目玉であるという表現に誇張はない。

しかしこの新米大臣が就任以来見せつけているのは、「ポエム」とも揶揄される意味不明な言動の数々である。

いや、意味不明の表現をポエムと呼んだのでは詩人に失礼な話であって、あるお笑いタレントが名付けたように「何か言ってそうで何も言ってない話法」とでも呼んでおくのが相応しいであろう。

たとえば、福島原発の除染廃棄物の最終処分場が未決であるという問題について今後の見通しを尋ねられると、大臣は「私の中で三十年後を考えた時に、三十年後の自分は何歳かなと発災直後から考えていました。だからこそ私は健康でいられれば、三十年後の約束を守れるかどうかという、

そこの節目を見届けることが、私はできる可能性のある政治家だと思います(中略)だからこそ果たせる責任もあると思う」と応じたのであるが、そこに会話は成り立っていない。

思い返せば父の純一郎元首相も似たような語法の使い手ではあり、会話が成立しないことで有名であった。

たとえば、過去に勤務実態のない不動産会社の厚生年金に加入しており、年金の支払いも受けたという事実が明るみに出て「違法ではないか」と国会で問われた際は、「人生いろいろ、会社もいろいろ、社員もいろいろ」とおどけてみせた上で、その会社の社長には大変な恩義があるのだとかいう全く関係のない話をして追及を逃れてしまった。

ただ、純一郎元首相の政治の流儀が「小泉劇場」と呼ばれたのに対し、進次郎大臣の言動は今のところ、演劇というよりはお笑いに近いものとして受け取られているようだ。

インターネットの上では、「進次郎大臣が真顔で言いそうな、内容の無いセリフ」を考える大喜利が催されているようで、大手新聞にまで取り上げられる始末である。

「赤を上げて、白を下げないとどうなると思いますか? そう、赤と白が、上がるんです」

「年末年始。年の瀬。師走。こういう言葉を聞くたびにね、いつもこう思ってきました。もうすぐ大晦日だな、と」

「皆さん、私は、みなさんに、十二時の七時間後は七時であり、十九時でもあるということを真剣にお伝えしたい」

我らが大臣の発する言葉はたしかに、これに類するナンセンスなお笑い種にほかならない。

しかも彼は将来の首相候補とまで言われるのであるから、自民党政権そのもの、ひいては我が国の政治そのものの水準を象徴してもいる。

だが、笑えないのは我々を包囲する時代の状況である。

国際関係は相変わらず不安定で、我が国の周辺に限っても、韓国との間では歴史認識をめぐる諍いが絶えず、ロシアからの領土奪還は見通しが立たず、中国に対しては軍事上の牽制が必要で、アメリカとの間にも貿易をめぐる厳しい駆け引きがある。

世界を見渡せば、アメリカの覇権が衰退するとともにEUは崩壊の兆しを見せており、さらには十何年かぶりに深刻な金融危機が起きても不思議ではないと囁かれ始めている。

国内に目を向けても、三十年にわたって破壊的な改革が繰り返された結果、社会は疲弊し切っている。

動揺の時代には、とりわけ慎重で巧みな言葉遣いが求められる。

うも進次郎大臣のような政治家に喝采を送る向きは、「発信力が大事である」などと主張しがちなのだが、上辺の表現力──それすらも疑われているのではあるが──で生き抜いてゆけるのは、秩序の安定した平穏な時代に限られるのだと知る必要がある。

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