習近平の国賓訪日を中止すべき4つの理由、魂胆は「天皇の政治利用」: 北野幸伯

習近平の国賓訪日を中止すべき4つの理由、魂胆は「天皇の政治利用」:  北野幸伯

来春に予定されている習近平の「国賓訪日」に、反対の声が上がっている。

佐藤正久前外務副大臣は11月11日、「香港問題」「邦人拘束問題」「尖閣問題」「日本食品の輸入規制問題」を挙げ、「4つのトゲを抜かないと国賓というわけにはいかない」と述べた。

40人の自民党議員が参加する「日本の尊厳と国益を護る会」(代表幹事・青山繁晴参議院議員)も、同じ理由で反対を表明した。

筆者も、習近平の国賓訪日に反対している。

なぜなら、中国は天皇を政治利用した過去があるからだ。(国際関係アナリスト 北野幸伯)

米中戦争の最中に
中国に接近する日本

中国の習近平国家主席
ウイグル人を100万人も拘束し、香港では民主化デモを武力で弾圧する――そんな国のトップと天皇陛下のツーショット写真が国際社会に与えるマイナスイメージは計り知れない Photo:EPA/JIJI

 筆者が習近平の国賓訪日に反対する理由は4つある。

 1番目の理由は、中国への過度の接近が、同盟国である米国との関係を破壊するからだ。

日本人はほとんど意識していないが、世界は2018年から「米中覇権戦争の時代」に突入している。

トランプは2018年7月、8月、9月と、連続して中国製品への関税を引き上げた。

これで、世界は「米中貿易戦争が始まった」と認識した。

 そして、同年10月、ペンス大統領がハドソン研究所で行った「反中演説」後、「米中新冷戦」という用語が世界中で使われるようになった。

 問題は日本政府の動きだ。安倍首相は2015年4月、米国における議会演説で、以下のように演説した。(太線筆者、以下同)

<米国国民を代表する皆様。
私たちの同盟を、「希望の同盟」と呼びましょう。
米国と日本、力を合わせ、世界をもっとはるかに良い場所にしていこうではありませんか。
 

希望の同盟――。
 

一緒でなら、きっとできます。>

 非常に感動的なスピーチで、結果、日米関係は劇的に改善された。

しかし、今となっては、「口だけ」と批判されても仕方ない状況になっている。

というのも、米国が中国に「宣戦布告」した直後から、日中関係は「劇的」といっていいほど改善されている。

 戦争の最中に、同盟国が敵国に接近する行為を一般的に何というだろう?そう、「裏切り」である

日本は中国に急接近することで、同盟国米国を「裏切って」いるのだ。

 それで、米国の日本への態度も変わり始めた。

トランプは、大統領就任後封印していた「日米同盟破棄論」や「同盟不平等論」を、再び主張し始めている。

 

人権侵害国家のトップと
天皇陛下の談笑シーンは悪夢だ

10月22日に行われた天皇陛下の「即位礼正殿の儀」には、世界各国から国王、王妃、大統領、首相などが集結した。

しかし、米国が派遣したのは「運輸長官」だった。

もともとペンス副大統領が出席する予定だったが、意図的に「格下」の大臣を送ってきたのだ。

日本政府は、米国政府の「シグナル」に気がついて、中国への接近を止めなければならない。

2つ目の理由は、「ウイグル問題」だ。

中国は昔から「人権侵害超大国」だった。

しかし、米国はこれまで、この国の人権を問題視することはほとんどなかった。

「チャイナマネー」が欲しかったからだろう。

だが、「米中覇権戦争」が始まったので、中国の人権問題がクローズアップされるようになってきた。

 その最たるものが「ウイグル問題」だ。

具体的には、中国政府がウイグル人約100万人を強制収容所に拘束していること。

これは、米国の対中「情報戦」に利用されているが、「事実」でもある。

<国連、中国政府がウイグル人100万人拘束と批判

BBC NEWS JAPAN 2018年09月11日

 中国政府が新疆ウイグル自治区でウイグル人を約100万人、テロ取り締まりを「口実」に拘束していると、国連は懸念を強めている。

 国連人種差別撤廃委員会は8月末、最大100万人のウイグル人住民が刑事手続きのないまま、「再教育」を目的とした強制収容所に入れられているという指摘を報告した。

8月半ばにスイス・ジュネーブで開かれた同委員会の会合では、信頼できる報告をもとに中国政府が「ウイグル自治区を、大規模な収容キャンプのようにしてしまった」と委員たちが批判。>

 日本政府は、21世紀の現在、中国でナチスドイツやスターリン時代のソ連のような人権侵害が行われていることを問題視すべきだ。

 習近平が訪日する頃、この問題は、もっと盛り上がっているだろう。

そして、天皇陛下が、100万人を拘束する国の独裁者と談笑する映像が、世界に配信される。

「日本国の天皇は、独裁者と歓談している」と非難されることは容易に想像できる。

そうなった時、天皇陛下にはもちろん何の非もない。

非難されるべきは、会談を設定した日本政府だ。

 

中国政府は昔から
天皇を政治利用してきた

しかし、国際社会は、そのようには受け取らず、「天皇が自らの意思で独裁者と談笑している」と理解するだろう。

なぜなら、外国人は普通、「天皇に政治的決定権は一切ない」という知識を持ち合わせていないからだ。

第3の理由は「香港問題」だ。

習近平は11月4日、上海で、香港政府の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官と会談した。

彼は、「中国中央政府は林鄭氏に高度の信頼を寄せている。

この暴動を止めること、そして秩序を回復することが、依然として香港で最も重要な任務だ」と述べ、彼女を激励した。

林鄭月娥は、国家主席から直々に「暴動を止めろ」「秩序を回復しろ」と言われ、「どんな手段を使ってもデモを鎮圧する」と決意したことだろう。

この会談後、香港警察はデモ隊鎮圧に実弾を使用するようになり、この原稿を書いている時点で2人の死者が出たと報じられている。

習近平が訪日する頃、香港情勢はさらに悪化しているだろう。

そして、力を使ってデモを弾圧する中国への風当たりは、さらに強くなっているはずだ。

そんな時期に、天皇陛下は「民主化デモを武力で弾圧する国のトップ」と会談させられる。

日本政府は、国際社会がこれをどう受け取るか、熟考するべきだろう。

第4の理由は、中国政府が天皇陛下を政治利用するからだ。

これは、にわかには信じがたい話かもしれないから、少し過去を振り返ってみる必要がある。

米中関係は、1970年代にニクソンと毛沢東が和解した後、ずっと良好だった。

毛の後を継いだ鄧小平は、日本、米国から資金と技術を思う存分受け取り、中国経済を奇跡的成長に導いた。

日米は、中国に「金と技術を無尽蔵に恵んでくれる存在」なので当然、日中、米中関係も良好だった。

しかし、1980年代末から1990年代初めにかけて、2つの理由で米中関係は悪化する。

1つ目の理由は1989年6月4日に起きた「天安門事件」。

人民解放軍はこの日、デモを武力で鎮圧した。

中国共産党は、犠牲者の数を319人としているが、英国政府は1万人以上としている。

これで、中国は国際的に孤立した。

2つ目の理由は、1991年12月の「ソ連崩壊」。

そもそも米国が中国と組んだのは、ソ連に対抗するためだった。

しかし、その敵は、崩壊した。

それで当然、「なぜ我々は、中国のような一党独裁国家と仲良くし続ける必要があるのか」という疑問が、米国内から出てきた。

 

天皇訪中に助けられた後
日本を裏切った中国

さて、中国は、この苦境をどう克服したのか?

ナイーブな日本政府に接近したのだ。

江沢民は1992年4月に訪日し、天皇皇后両陛下(現上皇上皇后両陛下)を中国に招待した。

そして1992年10月、天皇皇后両陛下が訪中された。

これを見た欧米諸国は、「日本は、中国市場を独占するつもりではないか」と焦りを感じるようになる。

中国の賃金水準は当時、日米欧の数十分の一であり、将来世界一の市場になることも確実視されていた。

だから、欧米は、「金もうけと人権」の間で揺れていたのだ。

中国は、天皇陛下を政治利用することで、日米欧を分断させ、日本だけでなく欧米の態度を和らげることに成功した。

これは、筆者の想像ではない。

1988年から10年間外交部長(外務大臣)を務めた銭其シンは、その回顧録の中で、天皇訪中が西側諸国による対中制裁の突破口であったことを明かしている。

話がここで終われば、「中国に一本取られた」程度だった。

しかし、問題はここからだ。日本と天皇陛下に救われた江沢民は、恩をあだで返した。

どういうことか?

中国政府は1994年、「愛国主義教育実施要綱」を制定。

1995年から、徹底した「反日教育」を行うようになった

そして、中国は、世界における「反日プロパガンダ」を強化していく。

アイリス・チャンの『ザ・レイプ・オブ・南京』が大ベストセラーになり、「南京大虐殺」が世界中で知られるようになったのは1997年のことだ。

同年、江沢民は真珠湾を訪問し、日本の中国侵略と、真珠湾攻撃を非難した。

この動きは一体何だろうか?なぜ、日本に救われた江沢民は、「反日教育」「反日プロパガンダ」を強力に推進したのか?日本を「悪魔化」するためだろう。

日本を悪魔化すると、米中関係はよくなる。

 

クリントン政権の本音は
「米中で日本を共同支配」

2度の世界大戦の前と戦中、米中関係(当時は中華民国だった)は、日本という「共通の敵」がいて良好だった。

そして、1970年代から1980年代末までは、ソ連という「共通の敵」がいて、やはり良好だった。

しかし、天安門事件とソ連崩壊後、中国が米国の主敵になる可能性が出てきた。

そこで中国は、「日本を米中共通の敵にしよう」と決意したのだ。

そして、中国の工作は成功した。

クリントン時代の過酷な日本バッシングを覚えている人も多いだろう。

この件に関連して、米国在住国際政治アナリスト伊藤貫氏の『中国の「核」が世界を制す』(PHP研究所)に驚きの話が紹介されている。

伊藤氏は1994年、当時米国防総省の日本部長だったポール・ジアラ氏と会った。

ジアラ氏いわく、

<「クリントン政権の対日政策の基礎は、日本封じ込め政策だ。>

<クリントン政権のアジア政策は米中関係を最重要視するものであり、日米同盟は、日本に独立した外交、国防政策を行う能力を与えないことを主要な任務として運用されている。>(200ページ)

伊藤氏は、米国の政策について、以下のように結論づけている。

<米中両国は東アジア地域において、日本にだけは核を持たせず、日本が自主防衛できないように抑えつけておき、米中両国の利益になるように日本を共同支配すればよい」と考えている。>(113ページ)

ここまでをまとめてみよう。

・1989年、中国は天安門事件で国際的に孤立した。
・中国は、ナイーブな日本政府に接近する。
・1992年、天皇皇后両陛下(当時)が訪中された。
・日本が中国市場を独占することを恐れた欧米は態度を軟化。中国の「天皇利用作戦」は成功した。
・天皇陛下を利用して包囲網を突破した中国は、「日本悪魔化工作」を開始。
・日本は、米中「共通の敵」にされてしまい、日米関係は悪化。
・逆に米中関係は、大いに改善された。

 

ナイーブな政府が
日本を滅ぼす

平成は、1989年1月8日に始まった。

同年6月4日に「天安門事件」が起き、中国は世界的に孤立した。

 令和は、30年後の2019年5月1日に始まった。

中国は今、ウイグル問題、香港問題で孤立している。

香港問題を語る際、しばしば「第二の天安門は起こるか?」といった表現が使われている。

 30年前、中国は日本政府を操り、天皇陛下を政治利用することで危機を乗り越えた。

そして30年後、中国は再び日本に接近し、天皇陛下を政治利用することで、危機を乗り越えようとしている。

習近平が来春「国賓訪日」すれば、天皇陛下に「近い将来の訪中」を要請する可能性は極めて高い。

天皇陛下は立場上、これを拒否できないだろう。

 習近平の国賓訪日に続く天皇陛下の訪中で、日米の亀裂は、さらに深まる。

日米同盟を破壊することで、中国は現在の危機を乗り越えるだけでなく、覇権に向かって大きく前進することになるだろう。

 日本政府はどうすればいいのか?これは簡単で、平成の間違いを繰り返さないことだ。

つまり、習近平の国賓訪日を断り、天皇陛下の訪中、つまり政治利用の可能性を事前に根絶する。

口実は、何とでもなる。

「邦人拘束問題、尖閣問題、ウイグル問題、香港問題などで、保守派議員の反発が激しい」と言えばいいだろう。

 人も国家も間違いを犯す。

しかし、優れた指導者は過去の間違いから学び、同じ過ちを2度と繰り返さない。

日本政府は今、無意識のうちに30年前の過ちを繰り返そうとしている。

安倍内閣が、過去の教訓から学び、賢明な判断を下すことを心から望む。

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