自粛要請するなら損害補償をせよ!  From 小浜逸郎

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『三橋貴明の「新」経世済民新聞』
 2020年4月2日

 自粛要請するなら損害補償をせよ!

 From 小浜逸郎
  @評論家/国士舘大学客員教授

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安倍首相が2月27日に小中学校、高校などの出席停止を要請しました。
小池東京都知事が3月23日、首都の封鎖=ロックダウンの可能性を示唆し、また25日には、感染が爆発的に拡大する「オーバーシュート」の重大局面との認識を表明しました。
小池氏は、安倍首相と再三にわたって会見、首相に「国の大きな力強い協力が必要だ」と要請しました。
首都圏3県もこれに応じて、ただちに協力体制の表明と自粛要請の指示を出しています。
これらによって、全国一斉に自粛ムードが高まりました。
マスコミは連日、それ以外にはニュースがないかのように、イタリアやアメリカの情勢を伝え、実際に感染爆発しているニューヨークやミラノの街並みを映し出し日本もやがてこうなるかのような印象を植え付けようとしています
しかし、日本の現状を見る限り、「ロックダウン」「感染爆発」「重大局面」「首都封鎖」「オーバーシュートなどのセンセーショナルな言葉が、事態を冷静に見極めたうえで発信されているとは思えません。
これらは、いたずらに不安をあおって過剰自粛の状態を生み出しています。
このまま過剰自粛の状態が続けば、飲食業や観光業だけでなく、早晩すべての産業に渡って激しい経済ダメージを招くことは必至です。
しかも小池知事は、疫病蔓延の危機を訴えるだけで、この経済の激しい落ち込みについては、何ら言及していません。
都の財政面からもあきらかに責任ある発言が伴うべきなのに、それは政府に丸投げの体です。

しかもその政府の「緊急経済対策」なるものは、すでにその大枠が報じられていますが、後述するように、情けなくなるほど貧しいものです。

未来は誰にも見えないので、予断は控えなくてはなりませんが、それでもあえて言わずにはおれません。
現状を見る限り、わが日本にとって、新型コロナ禍そのものは、そんなに大した危機でしょうか。

では、新型コロナが日本をどれくらい侵襲しているか、詳しく見ていきましょう。

それに先立って、次のような原則を立てておきます。
①感染件数は、国や地域によって検査を受診したかどうかが大きく異なるので、当てにならない。
検査数が増えれば感染者数もそれに応じて増える。またPCR検査は信憑性が低い。
陰性と出ても発病することがあり、逆もある。
②中国の統計は当てにならない。
③統計がしっかりしている国では、死者数に関してはある程度信用が置ける。

④死者数は絶対数でなく、人口当たりで見なくてはならない。

そこで、現状における死者数の国際比較を試みます。
下のグラフをご覧ください。

画像

出典:札幌医大 https://web.sapmed.ac.jp/canmol/coronavirus/death.html

このグラフは、1月下旬から3月31日まで、G20諸国の新型肺炎による人口100万人当たりの累積死者数を時系列で追いかけたものです。

ちょっと読み取りにくいですが、原本に当たると、ポイントごとにどの時点で何人累積死者が出たかがわかるようになっています。

なおイタリアと共に相当な被害に見舞われているスペインが載っていませんが、これは同じ資料でヨーロッパ篇に当たると、ちょうどイタリアとフランスの真ん中を貫くように急上昇しています。

それで、主要国の100万人当たり死者数を直近(3月31日)で並べてみると、次のようになります。

 イタリア    191.71
 スペイン    156.99
 フランス     46.33
 イラン      32.82
 イギリス     20.74
 アメリカ     9.58
 ドイツ      6.96
 韓国       3.18
 カナダ      2.36
 トルコ      1.99
 ブラジル     0.75
 オーストラリア  0.75
 アルゼンチン   0.53
 日本       0.44
 ロシア      0.07
日本は下から2番目、イタリアの435分の1です。しかも以下の記事によれば、イタリアの新型肺炎死者の99%が基礎疾患を抱えており、平均年齢は79.5歳と報告されています。
https://www.sankei.com/world/news/200320/wor2003200050-n1.html

日本では、毎年11万人が普通の肺炎で死に、死因の第4位を占めています。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/suii09/deth8.html
毎日約300人が死んでいる計算です。
おそらくこの場合も、基礎疾患がある高齢者が多いのでしょう。
この死者の2か月間=
60日の累積数は約18000人ということになりますから、この数字を百万人当たりの上のグラフに当てはめると、18000÷1億2600万×100万=142.8となって、現在の新型コロナ死者数の325倍となります。

新型コロナだけが特別ではない、そのことにもっと自覚的であるべきです。

次のグラフは、インフルエンザによる死者数(日本)の年次推移です。

画像

https://president.jp/articles/-/33053?page=2

これでわかるように、通常のインフルエンザだけでも、ここ7年間で、毎年平均2000人近くの死者が出ています

しかしこれまで、インフルエンザが流行しているからというので、これほどの自粛が要請されたという話は聞いたことがありません。
結局、新型コロナの場合、ワクチンができていないという未知の不安がことを大きくしているのでしょう。
それはそれでもっともな話と思います。また、むろん、イタリアやアメリカの現状を見れば、コロナが問題ではないなどとは言えません。

しかし、昔から清潔好きで律儀な生活習慣を身につけ、ウチとソトとを明確に分ける文化伝統をもつ日本人のことですから、よく言われているように、手洗いや消毒を励行し、密閉、密集、密接をなるべく避けるようにして、粛々と日々のやるべきことをこなしていけば、爆発的な死者増加に至ることは避けられるでしょう。
もちろん、そのために医療受け入れ態勢がこれまで以上に整えられていくことは必要不可欠です。
以上の条件がそろっている限り、外出自粛をこれほど徹底させる必要はほとんどないと筆者は考えています。
しかし十人か二十人程度しか集まらない小規模のイベントでも自粛して中止してしまう例が相次いでいます。
レストランも居酒屋も、にぎわっていた普通の商店街も観光地も、ぱったり客足が途絶えています。
これはどう見ても行き過ぎた情報パニックというべきでしょう。さてこうした情報パニックがもたらしている過剰自粛が、経済に計り知れない打撃を与えることは、言うまでもありません。

新型コロナ騒ぎがまだ起きていなかった昨年10~12月のGDPの落ち込みは、▲7.1%という恐ろしいものでした。理由はもちろん、絶対に避けるべきだった消費税の値上げです。
そこに新型コロナによる過剰自粛が追い打ちをかけているわけですが、この分で行くと、1~3月期の落ち込みは2ケタになるのを避けられないでしょう。
ただでさえ25年もデフレ脱却できていない日本経済は、リプルパンチを食らって回復不能に陥る可能性がきわめて大きい
倒産件数は膨大なものになり、失業者があふれ、自殺者も一気に増大するでしょう。

コロナ抑制対策によって、コロナ死者より自殺者が増えてしまったら、何のためのコロナ対策でしょうか。

政府をはじめとした行政機関は、これだけ自粛を煽ったのですから、同時にそれによって生ずる損害補償、休業補償を全面的に行なうべきです。

これは国家として当たり前の措置というべきでしょう。
ちなみにアメリカでは、個人への現金給付や企業への資金の支援を盛り込んだ2兆2000億ドル、日本円で230兆円を超える経済対策を迅速に成立させました。
個人への給付、医療機関への援助、中小企業や特に打撃の強い産業への支援などがその中身です。
個人の給付内容には年収7万5000ドル(年収825万円)以下の世帯には一律1200ドル(13万2000円)、年収が7万5000ドルから9万9000ドルの層にも援助されます。
また、子供1人につき500ドル(5万5000円)の追加給付が実施されます。
失業給付は13週間延長され、1週間につき600ドル(6万6000円)増額されます。
しかもそのわずか一週間後に、トランプ大統領は新たな経済対策として、大規模な公共事業などインフラ整備を進める考えを示しました。雇用を考えた中期的な対策でしょう。
算規模は、つい一週間前に成立した対策と同じ、2兆ドル程度としたい考えで、やつぎばやに対策を講じる方針です。
何とも羨ましい話です。
これは何もアメリカ政府が金持ちであるからではありません。
現代貨幣理論(MMT)によれば、高インフレにならない限り、自国通貨を持つ国は、いくらでも国債や通貨を発行できるのです。
日本でもその事情は同じなのに、政府は一向にそのことを理解しようとしません。
では、日本政府が考えている「思い切った経済対策」なるものは、どうでしょうか。
ここに25日にヤフーニュースに掲載された、「緊急経済対策」の大枠なるものがあります。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200325-00000223-kyodonews-bus_all&fbclid=IwAR3AfIZolBVOeG_Q3YodKPDnq0-CCjsF7aKMiCdxeNjE9syfsQBbIx82a8w
これには次の項目が列挙されています。①収入が減少した世帯への現金給付
②企業や個人事業主への特別融資枠拡充
③マイナンバーカードのポイント付与率を倍増
④感染終息後の旅行代金を半額補助
⑤雇用調整助成金の給付率引き上げ

一見して気づくことが二つあります。

この中に消費減税または消費税の凍結と、金額を明記した大規模な国債発行が盛り込まれていないことです。
この二つを盛り込むことで、国民の安心を得られるのは確実なのに、どれもこの二つを避けて、緊縮財政を維持したままでセコイ対策を打とうとしていることは明らかです。
①の現金給付は、収入減少の線引きをどこに引くのか明らかではありません。来年の申告時期まで待つのでしょうか。
②は給付ではなく、融資です。
負債を抱えた中小企業がほとんどなのに、さらに返済が必要な融資を受けるでしょうか。
政府の自粛要請に従って破産に追い込まれるかもしれないのに、どうしてさらに借金して返済しなくてはならないのでしょうか。
③は倍増されてもその金額は雀の涙。換金手続きも面倒です。
④に至っては、その子供だましの方法に思わず笑ってしまいます。
いつ終息するかもわからないし、家計が火の車になってしまった状態で、旅行などにのんびり出かけられる人がいるでしょうか。
大事なことは、いま所得の大幅ダウンに苦しんでいる国民をすぐに救済できる手を打つことです。
⑤雇用調整助成金は事業主に対して給付されるものであり、それが各従業員の懐に収まるかどうかは、事業主の意向にかかっています。
しかも給付率引き上げとあるだけで、どれだけなのかさっぱり分かりません。
つまり中央政府は、「思い切った対策を」などと口先だけは勇ましいですが、実際にはほとんどやる気がないと言っても過言ではありません。

総じて、現在進行中の経済危機に対して、その危機感の欠落にはあきれ果てます。

この記事の本文には事業規模の総額56兆円、財政支出は15兆円(これでも少なすぎますが)とありますが、金額の大きさに騙されてはいけません。

先の補正予算の時にも、総額26兆円と謳いながら、半分は民間、残りのうち9.4兆円が国と地方の歳出、3.8兆円が財政投融資で、結局補正予算は、例年と大して変わらない4.3兆円でした。
https://38news.jp/economy/15140

今度も、国民の難局を救うことなど天から考えていない狂人たちによる緊縮路線死守のために、妙なからくりを使ってごまかすに決まっています。

しかし、消費税凍結によって20兆円を家計に還元し、最低でも30兆円の国債を発行することによって、すぐにでも50兆円(GDPの1割)の経済効果が得られます。

消費をしない人はいませんから、10%を支払わなくて済む人は、その分だけ可処分所得が増え、しかもそれは間違いなく消費に使われます。
それが実体経済市場に流れる結果、生産者、流通業者をも直接潤すことになるのです。

しかし政府は、間違いを認めたくないというただそれだけの理由から、絶対に消費税に手を付けることをしないでしょう。

コロナ騒動は、1年も経てば、「あの騒ぎはいったい何だったんだ」となるかもしれません。

ただし同時にその時、日本経済の悲惨な廃墟を見ることになる……
筆者の悲観的な予想が外れることを祈ります。

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