書評 しょひょう : 桶谷秀明『昭和精神史』(扶桑社)
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書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評
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夏の汗、昭和は遠くなりにけり
昭和をかたちづくった日本人の精神はいま何処(いずこ)
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桶谷秀明『昭和精神史』(扶桑社)
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桶谷秀明氏は昭和七年生まれだから石原慎太郎、五木寛之氏らと同
敗戦時は、物心ついて、激しく変貌した現実と精神と
この世代の感受性、時代認識、歴史の見方は、まさに昭和の精神が
本書は名著復刻であり、このところ同様な試みが出版界でなされて
ちなみに
名著はかならず古典
本書は平成四年に初版がでた。
すぐに買って読んだ記憶だけあるが
十年前、憂国忌の四十年忌には評者が司会してのシンポジウムがあ
西尾幹二、井尻千男、遠藤浩一氏らとともに桶谷氏にも登壇
九段会館が満員となった、その席で、氏は三島よりも
http://mishima.xii.jp/kaiso/yu
評者にとっては桶谷氏の『草花の匂う国家』が一番好きな作品で、
さて本書が扱うのは昭和改元から敗戦まで。
続編は『戦後編』とし
以下、浩瀚な本書を少しづつ、一週間かけて読み直してメモを取っ
そのほんの一部を書評替わりに掲げる。
桶谷氏が親友の村上一郎氏と一緒に橘考三郎に会いに行く場面があ
これは意外感があった。
橘の『神武天皇論』も最近、篠原裕氏
「橘孝三郎がここに口ごもりつつ、もどかしげに語る口調にこそ、
『国民社会そのも
橘の思想遍歴が若き日のプロレタリア独裁から、その対極の思想に
昭和初期、若者らは、マルクス主義の台頭があり、インテリゲンチ
一方で国体論が世を風靡し、二・
すでに「歴史」となった出来事を、客観的に、
その時代背景を克明に描写しながら、おりおりの日本人の精神を語
桶谷氏は、伊藤整、武田泰淳、島崎藤村らを論じつつ、自然と重き
小林秀雄の捉え方も随所にでてくるが、この時代を生きた文
彼の浪漫主義にはマルクス主義とドイツ浪漫派と国学という三つの
「早くから保田輿重郎の教養となっていたのは国学で、畝傍中学時
そして柿本人麿を取り上げずに保田は
保田は満州蒙古から北支を旅して、南京陥落後のシナ人の生態を観
満州の地にあって、保田はこう書いた。
「樹木をきりはらって大造宮をつくりあげた漢人と、自然の緑を尊
近々百年にして漢人はこの沿線より原住民
それは一切の崇高な事業によってではない。
理念は強く美しく、
保田はまた竹内好の案内で北京を見て歩くのだが、「一般に私は北
また保田はアララギの万葉解釈を手厳しく批判した。
「それは人麿の古代を現代によみがへらせようとする意図を抱きな
アララギの思想は皮相な明治
その背後にある精
アララギには歴史の精神が欠落している
保田論だけで紙幅がつきた。
桶谷氏は二二六事件では、北一輝にこ
北一輝は蹶起した将校たちとは一線を隔し、軍事行動をしそうした
三島由紀夫、村上一郎をつなぐ
この復刊版の解説は長谷川三千子氏が丁寧に書いている。
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