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Common Sense: 国語が育てる日本人 ~ Live講座2-3から
幼年期は大量の語彙を素読で蓄積し、少年期は自分で考える力をと
■1.「言葉は通信手段に過ぎない」!?
昨日の国際派日本人養成講座Liveでは、「国語が育てる日本人
本年度から、小学校5、6年生に英語を正式教科として教える
たとえば、日本人が中国人に「こんにちは!」と呼びかけようと思
英語を覚えれば、こういう国際的コミュニケーションができるよう
■2.母親はなぜ自分の息子を「おにいちゃん」と呼ぶのか?
言語は、人間が世界を認識する枠組みを形成します。
たとえば、家
母親が2人兄弟のうち、兄の方を「おにいちゃん」と呼んだりしま
また、父親、すなわち夫を「パパ」と呼びます。
英語を母国語とする人々から見れば、訳が分かりません。
こうした呼び方を、「親族用語の原点移動」と解する言語理論があ
つまり、母親は家族のうち、もっとも幼いメンバー、
なぜ、こんなややこしい呼び方をわざわざ
それは日本語では、長幼の序を大切にしており、一番、若いメンバ
家族の中でも
ちなみに、英語では、母親は長男を「ジョン」、次男を「フレッド
そ
ただし、子供
このように、日本語を母国語として育つか、英語を母国語として育
■3.国語は「共感」の根っこを育てる土壌
このように言語を捉えると、言葉は単なる「通信手段」ではなく、
今回の教育シリーズでは、人間
花:処を得るの「知」
↑
幹:利他の「意」
↑
根っこ:共感の「情」
たとえば、福沢諭吉は上海で英国人に侮蔑されている中国人の姿を
そこから「
今回の「国語が育てる日本人」編では、共感の「根っこ」を育てる
たとえば、福沢諭吉の『
このように先人の言葉という土壌から、「根っこ」である共感の「
■4.言葉と体験との循環作用
このように、土壌として言葉を捉えると、弊誌1177号[b]で
あれ松虫が鳴いている
ちんちろちんちろ ちんちろりん
あれ鈴虫も鳴き出した
りんりんりんりん りいんりん
あきの夜長を鳴き通す
ああ おもしろい虫のこえ
という歌を習ったとします。
この時点で、子供たちがまだ「松虫」
しかし、その後で、虫が鳴いている場面に遭遇したら、この歌が思
昔、習った言葉が潜在記憶の中に残っていて、
とすれば、まだ体験の少ない幼児のうちは、とにかく素読でたくさ
そうすれば、
たくさん言葉を覚
ですから、意味は分からなくとも、とりあえずたくさんの言葉を潜
また、こうして「虫のこえ」という言葉を体験を通じて自分のもの
さまざまの虫のこゑにもしられけり生きとし生けるものの思ひは
こうして言葉は体験の意味合いを理解するのを助け、また体験が言
言葉は単なる抽象的な信号ではありま
体験という根っこから吸収された栄養分として、利他の「
■5.1年生の国語の教科書の音読宿題が苦痛だった
素読について、視聴者の方から、こんなご質問がありました。
__________
幼年期は素読が重要とのことでしたが、1年生の国語の教科書に載
どのくらいの難易度の文章を、
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「苦痛」の原因はいくつか考えられます。
まず、脳の発達過程から
幼児に多くの漢字を教える教育方法を開発した石
現在の1年生の国語では、ひらがなだけの、余りにも簡単な文章な
もっとも、子供の成長過程には当然、
かつての寺子屋では40人ほどの1年生にみな同じ宿題を与える、
年齢はバラバラでも成長度合いが同じ位の子供何人かで素読を
一人ひとりの子供の成長度合いを見ながら、
苦痛の原因としてもう一つ考えられるのは、宿題として「1人」で
素読は遊びと同じです。
皆で揃ってテキストを読み上げる、
講義中にお見せした登龍館
勉強と遊びを厳密に分けているのも、今の学校教育が幼年時の脳の
■6.松尾芭蕉の俳句一句を説明するだけで一時限
10歳から20歳くらいまでに、前頭葉は第二次成長期を迎え、物
この時期には、物事を主体
国語教育はそのための中心
こんな体験談をお寄せいただきました。
__________
確かに、教師の影響させる力は凄いと思う。
私は当時、中卒で50
何しろ松尾芭蕉の俳句一句を説明するだけで一時限が過ぎたのです
何故芭蕉はその言葉を用いたのか、その言葉に吊られ、奥の細道
灘校(
因みにワシは技術者でしたが、国語についての興味は未だに衰えて
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
灘校の事例とは、中学3年間かけて『銀の匙(さじ)』という小説
「伝説の国語教師」橋本武氏の授業のこと
そこでは、凧揚(たこあ)げのシーンが出てくれば、クラスの皆で
百人一首の場面では、グループに分けて、
駄菓子屋が登場すると、橋本先生が明治時代
そんな横道にばかりそれ
松尾芭蕉の俳句一句だけを一時間かけて説明する、という授業も同
こういう風変わりな国語教育が、
__________
この年、新入生たちにアンケートをとったんですよ。
「国語が好き
成績があがるかどうかより、まず国語好きになってほしいと始めた
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
■7.国語で伸ばす“学ぶ力の背骨”
なぜ、こういう風変わりな教育が効果を上げるのか、橋本先生の言
中学1年生で、『銀の匙』を読み始めて1か
「先生、このペースだと200ページ、
たしかに1か月かけて、まだ文庫本2ページしか進んでいません。
__________
スピードが大事なんじゃない。たとえば、急いで読み進めていった
すぐに役立つことは、すぐに役立たなくなります。
そういうことを
なんでもいい、少しでも興味を
私の授業では、君たちがそのヒントをみつけてくれれば
そうやって自分で見つけたことは、君たちの一生の財産になります
そのことは、いつかわかりますから、、、[伊藤,p140]
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ここで橋本先生が言っているのは、既成の知識を頭に詰め込むので
自分で疑問を見つけ、自分でそれを掘り下げようとする主
たとえば、凧揚げだったら、凧はなぜ揚がるのか?、凧がくるくる
面積を大きくすれば、どんな重い凧でも揚がるのか?
凧揚げ一つでもいろいろな疑問が湧いてきます。
自分で疑問を見つ
そういう練習を橋本先
__________
国語力があるのとないのとでは、他の教科の理解力が大きく違って
数学でも物理でも、深く踏み込んで、テーマの真
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
こう考えると、今の学校教育は知識を教え込んでいるだけで、“学
そうして、自分の心で感じ、自分の頭で考える生徒たちが、明
(文責 伊勢雅臣)
■リンク■
a. JOG(1171) 明治日本の躍進を生んだ人々はいかに育ったのか?
古典教育を通じて情(共感)、意(利他)、知(処を得る)のバラ
http://blog.jog-net.jp/202006/
b. JOG(1177) 脳科学が示す素読の効用~なぜ子供は素読に夢中になるのか?
素読は脳の発達プロセスに合致した合理的な教育方法だった。
http://blog.jog-net.jp/202008/
c. JOG(320 子どもを伸ばす漢字教育
幼稚園児たちは喜んで漢字を覚え、知能指数も高まり、情操も豊か
http://www2s.biglobe.ne.jp/~ni
d. JOG(898) 生きる力を引き出す授業(上) ~ 伝説の国語教師・橋本武
「一緒に『銀の匙』を読んだ生徒がねえ、還暦過ぎても、みんな前
http://blog.jog-net.jp/201505/
e. JOG(899) 生きる力を引き出す授業(下)~ 国語を通じて生徒は「共に生きる力」を伸ばしていく
「国語はすべての教科の基本です。『学ぶ力の背骨』なんです」
http://blog.jog-net.jp/201505/
f. 伊勢雅臣『世界が称賛する 日本の教育』、育鵬社、H29
http://www.amazon.co.jp/o/ASIN
アマゾン「日本論」カテゴリー 1位(8/3調べ)、総合41位
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