書評 しょひょう :『新たなミサイル軍拡競争と日本の防衛─INF条約後の安全保障』(並木書房) 

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  書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 : 宮崎正弘
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 なぜトランプはINF条約から離脱したのか
  パーシング2の欧州配備でソ連は交渉の場に現れた過去の経緯

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森本敏・高橋杉雄・編著
『新たなミサイル軍拡競争と日本の防衛─INF条約後の安全保障』(並木書房)
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 8月26日、中国軍が4発の中距離弾道ミサイルを南シナ海に向けて発射した。

これらは、いわゆる「空母キラー」と呼ばれ。米国にとって脅威である。

 これは中国が米軍のU2戦略偵察機が侵入したことへの牽制だが、一方で、米国防総省は「中国軍は一部の部門で米軍を凌駕している」として、射程500~5500キロの中距離弾道ミサイルを一例に挙げている。

 米国は旧ソ連と結んだINF(中距離核ミサイル)破棄条約により、同射程のミサイルを保有していない。

 だからトランプはINFを廃棄したのだ。

 この条約は6年にわたる交渉の末、レーガン大統領とゴルバチョフ書記長の間で調印され、地上発射型中距離ミサイルは欧州では廃棄された。

 ところが、アジア、中東ではむしろ拡散し、なかでも軍縮の枠組みに縛られない中国は核弾頭を含む中距離ミサイルを多数保有したため、米中のミサイル・バランスが崩れた。

 冷戦期、米ソが特定の核兵器システムの全廃を実現したことは、それまでの軍縮の歴史の中で画期的なことだった。

INF条約の起源は、1979年12月のNATOによる「二重決定」に求められる。

それは、パーシング2ミサイルを西欧に配備し、ソ連に戦域核戦力交渉を呼びかけるというものだった。

 交渉は紆余曲折を経たが、1987年に締結され、冷戦期の成功事例として評価された。

当時、西ドイツの首相は社会民主党のヘルムート・シュミットだった。

反核運動が盛り上がるなかでパーシング2の配備を決定し、ソ連を交渉の場に引きずり出した。

巷では極左グループが「死よりもアカが良い」といって道路に寝ころんでの抗議をしていた。

 日本としても、INF交渉の結果、アジアにのみソ連のSS‐20が残されることは回避しなければならなかった。

ときの中曽根政権が強く働きかけたことで、欧州とアジアのINFは全廃され、当事国ではない日本が、当事者意識を持って積極的に関与したことは高く評価されてしかるべきだろう。

 ロシアによる同条約違反や中国の中距離ミサイル増強問題から、トランプ大統領はINF離脱を宣言した。
 

2019年8月に同条約は失効した。

米国は新たな地上発射型中距離ミサイルの開発に着手し、日本を含む東南アジアへ配備される。

「イージス・アショア」の配備が中止され、敵基地反撃能力をどうするかが問われているいま、米国の中距離ミサイルの日本配備はこんご大きな政治問題になる。

かくして新たなミサイル軍拡競争にあって、中国をいかにして軍備管理の枠組みに組み入れるか? 

かつての「二重決定」方式は大きな示唆を与えてくれる。

日本は当事者意識をもって議論に参加しなければならない。

 本書は、そうした時代を見据え、ポストINF時代の安全保障について戦略・軍事・軍縮の気鋭の専門家が多面的に分析・検討したものである。

専門的な内容であるが、巻末に執筆者による「座談会」が掲載され、ポストINF条約時代の安全保障のあり方について総括している
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