ハーバード:CIA幹部の”日本支配”の勉強会? From:元陸将・福山隆

「情報(インテリジェンス)シリーズ」

ハーバード:CIA幹部の”日本支配”の勉強会?

From:元陸将・福山隆

米中覇権争いがヒートアップする中、
我が国の「生き残り」にとって安全保障・軍事・外交は重要であるが、
同様に情報(インテリジェンス)がその鍵を握っている。
米国のCIA、イギリスのSIS(MI6)、イスラエルのモサドなどのような
スパイや謀略をもやってのける強力な情報機関を持たない日本にとっては、
情報(インテリジェンス)の強化が喫緊の課題となっている。
そこで、今後は、読者の皆様の情報(インテリジェンス)に関わる
ご関心・ご興味にお応えすることを願って、

一貫・継続してこのテーマについて書いて参りたい。

「勉強会」に名を借りた諜報活動?

アメリカ滞在中は、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」
という本を書いたハーバード大学のあの有名なエズラ・ボーゲル教授の家に寄宿していた。

同教授の家は、イングランド風の木造建築で地下室を含む三階建てだった。

私達夫婦が借りていたのは、三階の屋根裏部屋だった。
部屋には、天窓が3ヶ所あって、

そこから日光が差し込み、夜はベッドの上から星が見え、
雨が降ればリズミカルなドラムの音、
雷の日はまるで花火を見るようで、日本では体験できないものだった。

アメリカに行く前には、私はボーゲル教授のことを
単に「親日派の学者」という程度しか知らなかった。

ボーゲル先生の家に寄宿し、
同教授の、大げさに言えば「生き様」を見る思いがした。

先生を通じ、アメリカの「官」と「学」のあり方について窺い知る思いだった。

私しか知りえない貴重な見聞を、
先生のプライバシーを侵害しない範囲で簡単に紹介したい。

先生の生き方で最も感心したのは、飽くなき向学心を持っていることだ。

1930年生まれの先生は、私が滞米した2005年から07年当時、
70代後半だったが週2回、中国人の若い女子留学生に個人教授を頼んで、
熱心に中国語の講義を受けていた。

先生は、日本語のみならず中国語もペラペラだった。
おそらくフランス語もドイツ語も自在だろうから、
「マルチリンガル」にちがいない。

英語上達に挑戦するのをためらうレベルの私には、
先生の知的な好奇心・情熱には驚かされた。

趣味は、私の様な俗人とは異なり、ゴルフはやられない、酒も飲まれない。
ひたすら勉強・研究することが趣味のようだった。

夫人が、「主人は、研究しか趣味がないの」と
少し皮肉めいて私に言ったものだった。

先生の生活は、学問一筋のようだった。
先生は単に学問だけの世界に留まらず、
CIAの高官(アジア担当の分析官・極東部長)だと言われている。

因みに、アメリカの学者を取り巻く環境は日本と異なり、
官学一体あるいは産官学一体という特色があるようだ。

日本では、昔、吉田茂首相が、東大の南原繁総長に対して
「曲学阿世」、「御前達は、無責任に言うことだけ言う」と皮肉を言ったが、
アメリカの学者は、行政にも参画する。

アメリカはでは、大統領が政策課題推進のために、
行政府の基幹ポストやその側近ポストなどに
短期在職を前提に3,000人にも上る民間人材を活用する「政治任用システム」が存在する。

大学の教授や一般民間人の有識者が、
行政府の要職に抜擢される制度は、
日本のように各省・庁のキャリアが要職に上り詰める人事制度とは異なる。

アメリカでは、日本のように議員内閣制ではないので、
高級官僚のみならず国務長官に就任した
キッシンジャーの例のように長官級ポストにまで自由・柔軟に民間の人材を登用する。

大学教授やシンクタンクの学者が、
日本でいえば指定職クラスの要職にどんどん採用され、
日頃の研究成果を実地に応用する機会が与えられる。

また、その行政ポストから大学に戻り、
行政の実践体験を新たな研究の土台として生かしている。

理論と実践の間を往復するので、学問研究に厚みが増す。

単に、口ばかりではない、机上の空論にとどまらない――ここが日米の学者の違うところだと思う。

先生は、数年前から「ハーバード松下村塾」というのを立ち上げて
日本のキャリア官僚を中心に留学生等を指導している。

月1回自宅に集めて、ピザ・寿司やワインをふるまいながら勉強会を主催している。

私がボストンに滞在していた頃は、ハーバード大学に留学中の
ある航空自衛官(2佐)が「ハーバード松下村塾」の座長(取りまとめ役)を務め、
安全保障、政治、通商産業、教育などいろいろな分野別に

約40名の学生を数個のグループに分け、
それぞれの分野に関連のある官僚を集めて、
先生の前でディスカッションさせる。そして1年間かけて英文のレポートを作ることになっていた。

「ある人物(ミスターX)」が、その勉強会の様子を見ていて、私に相談に来た。

「福山将軍、あの勉強会を見て違和感を覚えませんか?
ボーゲル先生はCIA幹部で国家情報官(ナショナル・インテリジェンス・オフィサー)だったと聞いています。

学生達に勉強会参加を止めた方が良いと助言すべきではないでしょうか。

キャリア留学生達は近い将来、日本の行政の中枢で政策の企画立案する立場です。

そんな身分・立場の留学生達が自己の専門分野の将来政策(10年後)について論議し、
一年もかけて英文のレポートをまとめてボーゲル先生に提出するは狂気の沙汰ですよ。

その研究レポートはまさに日本の将来政策そのものに限りなく近いもので、
『トップシークレット』に値するもので、
アメリカにとっては「最高に貴重な情報」はないのでしょうか。

特に将来の経済産業政策などがアメリカに知られれば、
日本の業界などがアメリカに負けじと、
一生懸命にやっている将来に向けた努力がフイになる恐れがあります。

アメリカに将来の通商産業政策などがバレてしまえば、
アメリカはそれを見越して、対抗措置を先行的に実施できるわけです。

ボーゲルは勉強会の様子を全て録音し、
バージニア州ラングレーにあるCIA本部に届けているはずだ。

CIAはその音声を分析し、学生たちが纏めるレポートを補完するほか、
学生の「品定め」をして、将来のエージェントにする官僚を選別しているはずだ。

春名幹男氏が書いた『秘密ファイル CIAの対日工作』(共同通信)にも書いてあるじゃないですか。

官僚や政治家について、CIAはファイルを作っている。

勉強会に参加する官僚たちのうち、
ボーゲル先生目を付けられた連中については、CIAがファイルを作り始めることでしょうね。

日本の官僚の中には、中国やロシアのスパイ以上に
アメリカCIAのエージェントがウヨウヨいるはずだ。

春名氏の本にもあるように、自民党政権の中枢には
政治家・官僚の中に必ずCIAのエージェントがいて、
日本の政策についてはアメリカに筒抜けになっている。

これらアメリカのエージェントについては警察も野放しの状態だ。

世界のインテリジェンスの常識から見れば、
この勉強会に参加する日本のエリート官僚は相当に『馬鹿』としか言いようがない。

おまけに、その席にサバティカル(休暇)で
ハーバードに来ている東大教授までいるとは!彼は中国の専門家だ。

アメリカ・ボーゲル教授は彼を二重スパイとして使っているのだと思う。

天下の東大教授とその教え子の官僚たちが
CIA・ボーゲル教授に手玉に取られる様を見ていると、
日本の将来が思いやられる。福山将軍、そう思いませんか」

ミスターXは、暗澹たる表情で、戦後日本の官僚たちの劣化ぶりを嘆いた。

筆者が、これにどう応じたかは「秘密」にしておこう。

諜報活動の極致というのは、
相手が何の違和感・疑念も抱かない中で諜報活動をすることである。

「ミスターX」の指摘が正しいとすれば、
「ハーバード松下村塾」と名付けた勉強会を利用し、

「日本の将来政策」を入手する仕組みをかくも鮮やかに作り上げている凄腕は、
実に「見事」という他ない。

留学生達は、碩学の勉強会に参加できると浮かれているが、
ミスターXが指摘したような可能性を完全に否定できるわけでもない。

ボーゲル先生が、CIAの幹部であったという経歴を考えれば、
「対日諜報活動ではないか」というミスターXの疑念も理解できる。

先生はきっと善意で日本の官僚留学生達に自宅を開放し、
寿司・ピザやワインまで振舞って私塾を開いてくれていると信じたい。

しかし、長年にわたり諜報に関わった
「ミスターX」の立場からすれば、疑念は消えないのだろう。

私は、我が家主でもあるボーゲル先生の弁護に努めたが、ミスターXはけして自説を譲らなかった。

このメルマガの読者の中には、
同盟国のアメリカがなぜ日本をスパイするのかと疑問に思われる向きもおられることだろう。

アメリカにとって「日本を自在に使嗾・支配すること」は極めて重要な国益である。

「日本を自在に使嗾・支配する」ためには日本に関する情報を完全にアップデートしておかねばならない。

2019年に『CIAスパイ養成官―キヨ・ヤマダの対日工作―』山田敏弘/著が出された。

世界最強の諜報機関CIAで工作員に日本語を教え、
多くのスパイを祖国へ送り込んだインストラクターだったキヨの話だ。

教え子たちは数々の対日工作に関わっただけではなく、キヨ自らも秘匿任務に従事していたという。

この本を読まれれば、アメリカが対日諜報・工作を重視していることの一端が理解できよう。

ボーゲル先生は昔、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と日本を持ち上げたけれども、
当時は「チャイナ・アズ・ナンバーワン」という中国礼賛に変身しているように見えた。

先生は中国をアメリカの望むスタイルの
民主主義国家に変えるための「尖兵・魁」の役割を追っているのだと思った。

当時の、アメリカの対中国政策には大別すれば
「ヘッジ政策」と「エンゲージメント政策」の二つがあった。

「ヘッジ政策」とは、中国の台頭がアメリカの脅威になるのを予測して、
これに対抗できるように準備することを重視した政策。

「エンゲージメント政策」とは、わかりやすい喩えで言えば、
「山犬や狼」のような凶暴な共産党独裁国家・中国を、
大人しい「飼い犬」に変えてアメリカと共存できるようにする政策である。

先生は、「エンゲージメント政策」の「尖兵・魁」の役割を果たしている――というのが私の推測であった。

中国サイドも先生の力量には注目していると見え、
様々な中国人が先生宅に訪ねて来ていた。

先生は、日本の学者のように象牙の塔に閉じこもらず、米中の狭間で活動している。

先生はトウ小平の伝記を執筆中だった。

天安門事件でデモに参加した、人民を殺害したトウ小平の伝記を先生が執筆することにより、

アメリカが中国に対して「免罪する」というメッセージを発する意義があるのだと、私なりに理解していた。

先生のような生き様こそが、
アメリカの「学」の世界の特色であり、アメリカの有数な力量のある学者の典型だと思う。

先生は学者としてのみならず、
アメリカCIAのインテリジェンス面における功績も、けだし超一流の評価を受けているに違いない。

わが国では、学者の知恵をないがしろにされ、活用していない。
一方のアメリカは、日本と正反対に、学者の力を大切に使い切っている。

日本でも、国家行政面でもっともっと学者の活用を促進するべきだと思う。

様々な分野の優秀な学者達の政策企画能力、インテリジェンス能力などが生かされれば、
「官の力(キャリア官僚の能力)」との相乗効果を生み、
日本の行政はもっともっとダイナミックな力を生み出すことだろう

日本の官僚制の悪弊――「官学の切り離し」――は、非常に勿体ないと思う。

特にインテリジェンス分野においては、
ボーゲル先生のような優れた学者を様々に活用することが不可欠だと思う。

ハーバード遊学を終えて帰国する際、
校内のカフェテリアで先生からお昼を御馳走になった。

先生が最も質素なサンドイッチを注文されたので、
私もそれに倣った。

先生は、食事の間CIAに関することとして次のような興味深い話をされた

「福山さん、最近CIAはモルモン教徒を(スパイ要員に)リクルートしているのですよ。

厳しい戒律を実践するモルモン教徒は人や組織を裏切らない。
だから、企業の経理部門などお金に関する部署にも採用されるのですよ。

また、モルモン教では、18歳から25歳の若い男女が
約2年間ボランティア宣教師として、世界各地で布教活動するんですよ。

その間に外国語を覚え、その国の文化や歴史などについての理解が進むのです。

CIAがリクルートするうえでは好都合ですね。
日本では有名なケント・ギルバートがモルモン教徒です」

先生ご自身もモルモン教の青年宣教師に似たような体験をされた。
1958年に奨学生として日本へ留学、1年目は日本語を学び、

2年目は千葉県市川市を拠点に日本の一般家庭に入り、
そこから日本の社会構造や国民性を考察することになった。

精神病患者のいる家庭に関する博士論文を書いた先生は、
米国とは異なる社会へ赴き比較研究をするべきだ、という指導教官からの助言を受け、
それまで特に関心を持つことはなかった日本へ行くことを決めたという。

2年間の現地視察を経て、家庭という領域を超えて、
より大きな視点から、日本社会を総合的にとらえることの面白さと重要性を身に染みて感じた、と言う。

のちにベストセラーとなる
『ジャパン・アズ・ナンバーワン:アメリカへの教訓』1979年出版、阪急コミュニケーションズ)は,そうやって生まれたのだ。

先生の「CIAはモルモン教徒をリクルートしている」という言葉は
ご自身の体験とに裏打ちされたものだと思った。

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