書評 しょひょう : 『ミトロヒン文書  ──KGB工作の近現代史』(ワニブックス) 

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  書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評  
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 『ヴェノナ文書』とならぶスパイ・ドキュメント、新たに登場
  KGB工作の実態、とくに実名で告発するのが『ミトロヒン文書』

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山内智恵子著 江崎道朗監修
  『ミトロヒン文書  ──KGB工作の近現代史』(ワニブックス)
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 日本の読書人はことのほかスパイ小説が好きである。

 ジョン・ル・カレ、フリーマントル、フォーサイス、古くはジェイムズボンド=007シリーズのイアン・フレミング、

月と6ペンス』を書いたサマセット・モームら、いずれも英国人、英国の情報機関で働いた経験があるからこそ、リアルなスパイ小説が描けたのだ。

 マイケル・バーゾーハーも全作品が翻訳されている。

なるほど世界でも稀な読書人、日本人はスパイ小説大好き。

それでいて実際のスパイが日本で想像を絶するほどの規模と地下人脈で暗躍していることには目を瞑る。

スパイ工作はフィクションで愉しむものの、実態には殆ど興味なしという特殊な状況がある。

 何たって、日本にはスパイ防止法がないし、いま中国のスパイがウジ虫のように蠢いていても、なんら防諜体制が取れない。

欧米では陸続と孔子学院が閉鎖されているのに、日本では増殖中だ。

 ソ連の崩壊以前、日本でメディア工作にあたったKGB要員のスタニスラフ・レフチェンコは、日本で三十から四十名の日本人代理人を駆使し情報工作を展開していたが、或る日、米国へ亡命する。

そして1982年7月14日、米国議会で衝撃的な証言をなし、日本の政界、新聞界を揺るがす大事件となった。

 じつは評者(宮崎)、このレフチェンコの議会証言を翻訳した。

万部ほど売れた。

また電話インタビューで週刊誌の取材を手伝い、あげくにはサンフランシスコでレフチェンコと会う手筈となっていたが、日程的に段取りが就かず、当時『週刊現代』の編集長だった元木昌彦氏が飛んだ。

その前にも週刊文春の斎藤デスクが渡米し、独占的に長時間のインタビューをこなした。

 翌年に評者はワシントンで『今日のKGB』を書いたジョン・バノにインタビューしたこともある。

2020年1月に訪米したとき、NYにKGB博物館が出来ていた。

ゆっくりと見学したが、これほど左様に米国ではKGBへの理解度も深いのである。

スパイ工作に鈍感な日本とはえらい違いだ。

 レフシェンコがあげた日本人のKGB代理人たちのリストと、ミトロヒンがあげたリストが、殆ど重なることが判明している。

本書のポイントの一つである。

 思想に共鳴した確信的なスパイは共産主義華やかな時代の話、戦後はカネか女で釣れた。

また学者には名誉をくすぐるなどして、「無自覚的な代理人」に育てた。

なかでも「影響力のある代理人」がいて、KGB工作に無自覚的に協力し敵性国家の政治プロパガンダを手伝った(いまの日本はこの構造が中国人のスパイ網に入れかっわっている)。

 これら日本人代理人は、当時暗号名しかわからず、日本のメディアはこの暗号(コードネーム)はだれそれ、あの暗号は某某と推理ゲームに明け暮れたものだった。

1991年、ソ連が崩壊した。

どっと機密文書が西側へ流れた。

歯止めをかけたのがプーチンだった。

KGB出身のプーチンとその側近らは、殆どが諜報の専門家であり、とくにプーチンはアンドロポフとゾルゲを尊敬しているのだ

「柔道家」「知日家」というプーチンの明るいイメージは崩れる。

 ソ連崩壊後の機密文書の公開は「リッツキドニー文書」(ソ連共産党指導者の個人文書など)、ヴェノナ文書、マスク文書(英国政府通信学校が作成)、イスコット文書(同)、ヴァシリエフ・ノート(旧KGB文書、手書きで1115ページ)、そして、本書が取り扱うミトロヒン文書である。

KGB第一総局文書庫所蔵文書担当だったミトロヒンは、手書きでこつこつと10万ページものメモを作成していた。

「ミトロヒンは、特に非合法諜報員を使った作戦に関する文書を重視して筆写したため、非合法駐在所、非合法諜報員と彼らの作戦情報が多い」(56p)。

1992年3月、かれはこれをラトビアの首都リガにある英国大使館に持ち込んだ。

ラトビアはソ連の軛から離れたばかりだった時代である。

かくして世紀の機密文書が世に出る。

中味は本書を読んでのおたのしみ。
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